企業は「ほしい人材がわかっていない」から伸び悩む

山梨 それは企業もまったく同じですよね。いかにして「いい人材」を確保するか。しかも、「いい人材」を採るとなれば、自分たちにとっての「いい」とはなんなのかを定義して、発信していかなければならない。

瀧本 そのとおりです。

山梨 企業が伸び悩むときの大きな要因は、どういう人を求めていて、どんな働きをしてほしいのか、自分たち自身がわかっていないことですよ。それで結局、学歴や学外活動の実績、あるいは面接の印象だけで採用してしまう。

 でもね、たとえばマッキンゼーと大銀行だったら、やっているビジネスも違うし、社風も違うし、求められるスキルもまったく違う。そのへんを「優秀な学生」というひと括りで採用してしまうのは、とても危険なことだと思います。

マッキンゼーの人は「何」がすごいのか?

瀧本 致命的ですね。

山梨 これはコンサルタント時代に、たくさんの経営者や人事担当者とさんざん議論していた話なんですけど、まあ噛み合わないですね。

 やっぱり、「うちはこういう会社だから、こういう特長を持った人材を求めています」と表明して、実際にその基準に見合う人だけを採用するのって、かなりリスクが高いことなんですよ。それよりは漠然と「優秀な学生」を採ったほうがいい。そのロジックはよくわかる。でもね、もうその時代も終わったと思うんですよ。

瀧本 大学レベルでいうと、多様性のある人材確保という名目ではじまったAO入試が、うまく機能していない現実があります。

 それに対して、もっと大学を透明化して、オープンにして、「うちの大学にはこんな教授がいて、こんな講義をやって、こんな研究に取り組んでいます」という情報を発信していく動きがはじまっているんです。

山梨 僕らがクライアントに提案し続けてきたことですね。

瀧本 だからこそ『いい努力』に書かれていたように、常に自分の仕事、自分の会社(組織)を定義づけしておかないといけないんですよ。