ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄 人口減少の経済学

人口高齢化によって社会保障給付は自動的に増える

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第12回】 2011年1月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 日本の国債発行は今後10年程度の間に行き詰まるであろうことを、前回示した。そこでの大前提は、国債発行額が今後も縮小しないことだ。そう考える基本的な理由は、今後人口高齢化に伴って社会保障給付は増大せざるをえないことだ。

 その一方で、税負担をそれを上回る率で引き上げるのは、極めて困難である。現実には、税負担の引き上げ率は、社会保障給付の増加率に及ばない可能性のほうが高い。そうであれば、国債発行額は現状よりさらに増加し、したがって財政破綻が前回の推計よりは早く生じることになる。以下では、この点をもう少し詳細に検討してみよう。

社会保障給付費は
65歳以上人口数と密接に関連している

 最初に、社会保障給付費の推移を【図1】に示す。ここで「社会保障給付費」とは、ILO(国際労働機関)が定めた基準に基づき、社会保障や社会福祉等の社会保障制度を通じて1年間に国民に給付される金銭またはサービスの合計額である。「医療」「年金」「福祉その他」に分類して示されている。

 その推移を見ると、1985年度に35.7兆円であった総額は、98年度にはその2倍に増加し、2007年度には2.5倍にまで増加した。08年度では94兆円を超えている。

 項目別に見ても、あらゆる項目が増加を続けている。とくに増加が著しいのは年金である。08年度の額は、85年度の3倍近くまで増加している。その結果、社会保障給付全体に占める年金の比重も高まった。85年度には47%であったが、89年度に50%を超え、90年代の末からは53%程度になっている。

 ところで、社会保障給付は、人口構造と密接な関係がある。とくに年金は、制度的に65歳以上人口とほぼ比例する関係にある。上述のように現在の社会保障給付の過半は年金なので、年金制度の抜本的な改革が行われない限り、今後も社会保障給付費が増加することは避けられない。また、医療費や介護費も、高齢者が増えると増える。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR


おすすめの本
おすすめの本
消費税だけでは財政再建できない!「日本を破滅から救うための経済学」

経済論争の最大のトピック=デフレ問題から、赤字国債発行の問題点、年金の破綻、消費税増税、円安誘導の為替政策まで、主要論点を網羅。いずれのテーマでも、通説と一線を画す内容に驚愕すること必至。綿密なデータの読み込みに裏付けられた、野口教授のマクロ経済政策論!1680円(税込)

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄 人口減少の経済学

現在、人口減少が避けられない状況にある日本。人口構造の大きな変化は、経済パフォーマンスやさまざまな問題と深く関連しているが、政策などに十分に考慮されていないのが現状だ。本連載ではそうした状況に疑問を呈すべく、人口減少と経済問題などとの関連性を深く分析していく。

「野口悠紀雄 人口減少の経済学」

⇒バックナンバー一覧