
「日本の学生は奨学金の返済に苦しんでいるのに、外国人留学生ばかり優遇されている」そんな声を見聞きしたことはないだろうか。だが、制度の中身を詳しく見てみると、話はそう単純ではない。外国人留学生への支援をめぐる誤解を紐解いていこう。※本稿は、木村 幹『国立大学教授のお仕事――とある部局長のホンネ』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
国費留学の採用枠はごくわずかで
「優遇」という批判は的外れ
留学生にかかわる奨学金については、日本国内ではさまざまな誤解がある。典型的なものの1つは、日本人学生が日本学生支援機構による「貸与制」の奨学金しかもらえないのに、留学生はそのほとんどがふんだんな奨学金をもらっている、というものだろう。
でも留学生をとりまく現状はこうした話とは全く異なっている。
たとえば、留学生が受ける代表的な奨学金である文部科学省からの「国費留学生」の数は、2020年の段階で8761名。同じ年の留学生の総数は27万9597名だから、国費留学生はその中のごく少数であることがわかる。
ちなみにその内訳は次のようになっている(表7-1)。中国やベトナムといった、現在日本の大学に多くの留学生を送り込んでいる国の学生には、国費留学生の割合が少ないのがわかる。

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