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森信茂樹の目覚めよ!納税者

「アップルの租税回避に追徴1.5兆円」を巡る米国の本音

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第124回】 2016年11月5日
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Photo:DW

 アップルがアイルランドで行う事業に対して同国の税制優遇措置を受けていることについて、欧州委員会は、EUの国家補助(state aid)法違反だとして、これまでの優遇税制の合計である130億ユーロ(約1兆5000億円)を、過去にさかのぼってアップルから追徴せよと命じた。

 これを受けて、アイルランド政府は、「欧州委員会の決定は受け入れられない」として、欧州司法裁判所(ECJ)に提訴する手続きをとった。アップルも、「法に従って納税しており、違法はない」との立場を取り、今後の議論は司法の場に移っていく。

 今回問題となったアップルのアイルランドでのスキームは、本欄(第65回「超巧妙なアップルの租税回避策」)でスキームの概要を紹介したダブルアイリッシュ・ウイズ・ダッチサンドウィッチとは異なるものである。ダッチ(オランダ)は登場しない。

 しかし、合法な私法取引をつなぎ合わせて、アップルが欧州で無形資産を活用して稼いだ利益の大部分を、アイルランドでは法人税負担を求めずに、税金のかからないところ(タックスヘイブンのペーパーカンパニー?)に移転させたという点においては、共通するものである。このスキームでアップルの実質的な税負担率は、2003年に1%だったのが、2014年には0.005%に低下しているという。

 欧州委員会は、プレスリリースで、以下のような図を掲載している。

米国内でも
この問題への反応はさまざま

 米国政府は、アップルへの追徴課税勧告に対して、「さかのぼって課税するというのは、EUへの投資を損なう決定だ」と欧州委員会に抗議したが、もう一つ力が入っていないようにも見える。以下、米国の本音を探ってみたい。

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森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

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