スターバックス事件が引き金となって、脱税(違法)でもない節税(合法)でもない「租税回避(タックス・アボイダンス)」が世界的に大きな問題となりつつある。わが国でも、この問題を多国籍企業のモラルの問題と放置しておくのではなく、真剣に受け止めて、法律の整備などルールの明確化を進めていく必要がある。

アマゾン、グーグル、アップルにも波及

第47回のこの欄で取り上げた英国のスターバックス租税回避問題は、アマゾンやグーグルに波及し、米国やフランス・ドイツなど他の先進諸国にも影響が広がった。米国では、アップルが議会に呼ばれ、証言をしたが、財政赤字を背景に神経をとがらす先進国政府にとって、早急にこの問題に幕を引く様子はない。

 脱税でもない、節税でもない、法には反しないが、通常用いられないような法形式を選択し、税負担を減少させるのが「租税回避」である。

 私は、コロンビア大学ロースクールで租税法を学んだが、ニューヨークの高名な弁護士が教鞭をとる国際租税法の授業は、その大半が、いかに税負担を軽減するかというスキームの説明であったことに驚いた経験がある。

 一方で、一流大学を出た弁護士が、租税回避スキーム作りに精力を傾けることについては、これほど人材を無駄にするものはないと、大いに嘆くまっとうな教授もおられた。

租税回避のスキーム

 租税回避にはさまざまなスキームがあり、それを類型化することは難しい。問題となっているスターバックスやアップル、グーグルなどのスキームを見てみよう。