あなたは後輩社員を厳しく叱って育てるタイプですか。それとも、やさしく接して育てるタイプですか。最近は、叱ると「ポキリ」と折れてしまう若手社員が少なくないため、「やさしく接することが正しい育成法」とされる傾向があります。

 しかし、それは必ずしも正解とは限りません。なぜなら、実は「叱る・叱らない」以外に後輩社員を育成するうえで、もっと重視すべき接し方のポイントがあるからです。それに気がつかないと後輩社員と先輩社員の間には、修復不可能なギャップが生まれてしまいます。今回は、その修復不可能なギャップとは何かを明らかにし、後輩社員へのふさわしい接し方について考えていきましょう。

ときにお叱りは長時間のお説教に…
「叱って指導」が当たり前だった時代

「何をやっているのだ、もっとしっかりしろ!」

 後輩社員が先輩社員から厳しく叱られる光景は、10年前ならばどの職場でもみかけることができたものです。ちなみに私が若手社員だった頃の職場(リクルート社)も、多くの後輩社員が当時の先輩社員に厳しく叱られていました。

 例えば、私自身も単純ミスをすると、怖い形相の先輩社員から「こっちにきなさい」と呼び出され、

「何やっているのだ!やる気が無いなら会社を辞めろ」

 と、キツイお叱りを受けたことが何回もありました。

 ときにはお叱りがお説教になり、延々と時間が経過することも。仕事の注意だったはずが、性格に対する指摘にまで発展して、

「昨日の食事で俺のビールグラスが空いていたのに気付かなかっただろう。そんな気配りができないところが仕事でも出てくるのだ」

 などと、胃に穴が開きそうなくらい小言を言われることもありました。

 このように職場で叱られる機会が多いと、自然と防衛本能が生まれるもの。

「口答えすると怒りが爆発するから黙って聞いていよう」
 「うなずいて、真摯な態度をとっていれば、お叱りはすぐに終わる」

 と、多くの人が叱られたことに反省するより、叱られる場面から早く逃れるための処世術に長けてしまっていました。

 こうなると叱る意味は半減。それでも「後輩は叱って指導するもの」と当然のように考えられていたので、大抵の先輩社員は繰り返し叱ったものでした。叱ることが“職場のヒエラルキー”を維持する手段になっていたのかもしれませんね。