それより私が心配しているのは、反トランプ支持者のデモや暴力を使った革命といった動きではなく、「マイノリティが力を使う」という事態が加速することです。これまでにもすでに起きているような、アフリカ系の人が警官に殺され、それに対する暴動が起きるといった動きです。

 今回の選挙で「白人のアメリカ」と「マイノリティのアメリカ」にはっきり分かれてしまった。米国社会における暴力が拡大していく懸念が拭えません。

 何しろ、トランプ氏を支持する人がいる一方、特に都市部に「トランプだけは絶対に嫌だ」という人たちがいる。就任時に、これだけ社会の分裂とつながっている大統領候補者はいまだかつていません。

 2009年にオバマが大統領になったときにも、反対する人はいましたが、これほど正面から反対する人はいなかった。ジョージ・W・ブッシュ(任期2001年〜09年)にしても、就任時にはこんな分断はなかった。むしろブッシュは「思いやりのある保守主義(Compassionate Conservatism)」という標語に表れているように、マイノリティにも寛容な立場を打ち出して、ラテン系などの支持も集めていました。

「国民の統合」の象徴である
大統領が引き起こした分断

──ロナルド・レーガン(任期1981年~89年)のときとも違いますか?

 レーガンの場合は、内と外で評価が逆でした。彼は「極右の大統領」という印象から、日本や当時の西ドイツなど米国外で強い恐れ、懸念、反発が生まれました。ところが米国内では必ずしも、そうではなかった。そもそも圧倒的な票を集めての就任でしたし。

 むしろ当時の米国では、大学生や大学教員が「自分たちが思うほど、世間の人たちはレーガンをおかしいと思っていない。孤立していたのは自分たちの方だったのか」といったように、インテリと一般国民との距離感を思い知らされるような事件でした。

 ところがトランプ氏は国外、特にヨーロッパから反発も大きい一方で、国内の反発が厳しい。

 米大統領というのは、行政の最高責任者という立場である一方、国の統合のシンボルであり、国王に代わる存在です。最大の役割が「国民の統合」なんですね。それが国民の分裂をいざなうというのは矛盾に近い。