──今回、大統領選と同時に行われ連邦議会の上下両院の選挙でも、共和党が共に過半数を獲得しました。

 上下両院と大統領が同じ政党に属しているという状況は、久しく米国ではみられなかった点で、大統領はこれまでになく強い立場に立つことができる。議会の反対がなく、国民の審判を受けたという点で、自分の権力を規制しない大統領になる可能性があります。危険ですね。

──ポリティカルコレクトネス(政治的正しさ)を意識しない数々の暴言は、トランプ氏が候補者段階だったからこそ。仮に大統領になれなくても財産を失うわけでもないわけだから、好き勝手言えた。しかし、さすがに大統領という立場になったら変わるという見方はできませんか?

 本来は、大統領候補だからこそポリティカルコレクトネスであることを強いられるんです。候補として戦っている間は、おかしな発言をしたらそれで終わり。だから、普通はいい子にする。ところがトランプ氏は、それをしなかった。

 暴言によって支持をあおり、誤りを否定されてもそれを認めない。暴言や事実誤認を認めないということでメディアが取り上げる。それによって、暴言から解放された自由でユニークな候補として人気を取ることができる。だから意図的にそういう行動を取ったとも考えられます。彼がかつて「アプレンティス」というテレビ番組でやっていた手法と同じです。

 大統領になったら、あのようなやり方で人気を取る必要がなくなり、普通になるかもという見方もありますが、この人の場合、多くの国民から愛されているという状況を維持できないと、大統領になった意味を自分でも認められないでしょう。

 彼が好きな映画は「市民ケーン」だそうです。珍しく正直なことを言うと思ったのですが、市民ケーンというのは、愛されることを求めながら、人を愛することができない男の物語で、主人公は最後は孤独に死ぬわけですが、彼の生き方がそのスタイルであるとすれば、大衆から熱狂的な支持を保つことは不可欠なことのはずです。大衆動員型の政治家というのは、大統領になっても変わりません。

「ブラッドリー効果」と
マイノリティの棄権

──ところで、今回の大統領選挙の結果をメディアや専門家はなぜ読み違えたのか、改めて分析してもらえますか。

 私自身、予測を外しているわけですが、原因のひとつは「ブラッドリー効果」です。有権者が世論調査で本当のことを言わないというものですが、そうした「隠れトランプ支持者」が多かった。女性蔑視発言や、移民に対する差別発言などを繰り返す候補の支持を表明するのは勇気がいります。自分がトランプ氏を支持していることを公言することで生じるさまざまなリアクションを懸念して、本当のことを言わないわけです。