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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国共産党は自らの“正統性”強化にトランプ当選をこう使う

加藤嘉一
【第90回】 2016年11月22日
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米大統領選による
民主主義の劣化を宣伝

 米国の大統領選挙は、ドナルド・トランプ共和党候補の勝利で幕を閉じた。

 本連載の核心的課題は中国民主化研究であるが、観察と分析の核心的対象はやはり中国共産党である。なかでも、中国共産党の「正統性」という問題は核心的ある。

 この認識に立ち、本稿では、今回の米大統領選およびトランプ氏勝利が中国共産党の正統性にどのような影響を与えるのか、言い換えれば、中国共産党はそれらをどう利用し、正統性の強化につなげようとしているのかを考えてみたい。

 三つの視角から分析を試みる。

 一つ目は、米大統領選過程における一連の出来事が米国の民主主義をはじめとする制度や価値観の劣化を象徴していることを前面に宣伝することで、西側の政治体制や価値観が万能でないどころか大いに問題があると印象づけ、結果的に中国の政治体制やイデオロギーの正統性を打ち立てようとしている点である。

 米国の選挙キャンペーンに対するネガティブな見方や指摘は選挙の大分前からなされていた。共産党の意思や立場を代弁・宣伝する立場にある党機関紙の記事からそれが見て取れる。

 「我々が今回米国の選挙制度こそが敗者だと考えるのは、米国全土、世界中が注目する討論会が、相手の嘘に対する無情なまでの攻撃に終始していたことに一つの理由を見いだせる。考えてみよう。どちらの候補が大統領になったとしても、その汚点は世間の人間全員が知るところである。この角度から見ると、米国が世界に向けて自慢・宣伝してきた“民主選挙制度”の真実が今回の選挙を通じて徹底的に暴露されたといえるだろう」(光明日報、2016年10月12日)

 「米国メディアに“史上最も醜い”、“最も腹立たしい”などと称された今回の討論会は、昨今の米国式選挙制度の失態、そして米国政治の衰退を凸出させたと言える」(経済日報、2016年10月12日)

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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