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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国がG20で見せた、世界で孤立したくないという本音

加藤嘉一
【第85回】 2016年9月13日
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杭州市民は1週間の有給休暇
念入りに準備された杭州サミット

習国家主席と握手する安倍総理(代表撮影)
出典:首相官邸HP

 「杭州サミット期間は西湖の畔にもほとんど市民が見えなかったでしょう。杭州市民は約1週間の有給休暇をもらっていたの。杭州の戸籍を持っていれば、全国どこの観光スポットに行っても入場券が無料になるというサービス付きだった。ただ、ルックスが比較的良い市民、特に党や政府関係の職場で働いている人間は半ば強制的に西湖の畔を散歩するように命じられたわ。私もその一人」

 杭州市人民政府で働く女性幹部が私にこう語った。

 先週閉幕したG20杭州サミット。

 当局、もっと言えば、以前に浙江省杭州市で働いたことのある習近平国家主席は、古巣での国際会議を"成功"させるために、手段を選ばなかった。サミット開催の約1ヵ月前からあらゆる規制が展開された。

 杭州に向かうフライトの乗客には空港で特別なセキュリティチェックが課された。杭州に向かう高速鉄道の乗客には、出発地と現地双方でセキュリティチェックが課された。もちろん、サミット開催前後に観光客が入ることなど許されない。冒頭にあるように、杭州市民はサミット開催中、"不在"を奨励された。有給休暇、しかも全国どこのスポットに行っても無料という条件。多くの市民は喜んで故郷を出た。

 すべてはサミットの成功のためであった。セキュリティを強化しなければ、市民に地元から出てもらわなければ、あらゆる不確定要素が起こりうる。普段の杭州は渋滞が激しく、西湖の畔は地元住民や観光客だらけで、一種のカオスと化す傾向にあった。中国当局は特にテロリズムを警戒していたように見える。昨今、とりわけ“イスラム国”にまつわるテロリズムが中国国内に"侵入"することを、過去に例を見ないほどに恐れているのだ。

 本稿では、中国が杭州サミットを主催する過程と光景を眺めながら、私が感じた「中国共産党がいま目論んでいる世界、これから作ろうとしている秩序」を綴ってみたい。

 本連載の核心的テーマは中国民主化研究であるが、それを掘り起こしていく上で、中国共産党がいま何を考えていて、自らが望み、作ろうとする世界と、そのために開催する杭州サミットのような国際会議での出来事をレビューすることは、有益であると考える。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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