そうした事実を多くのメディアや専門家が発信し続けたにもかかわらず、なぜトランプ支持者は“間違った意見”への支持を変えなかったのでしょうか。

 この点について、欧米のメディアや専門家がどのように分析するのか注意深く見ているのですが、まだそうした報道は多くありません。その中でも、いくつか「なるほど」と思える意見があったので紹介すると、その1つは、一般大衆はもはや専門家の意見を信用しなくなったというものです。

 専門家は常に、まず国全体やマクロ経済のことを考えるので、たとえば自由貿易は国全体にとって利益となり、比較優位を失った産業から成長産業に円滑に労働移動させればいいのだ、となります。

 しかし、多くの人は国全体やマクロよりも、自分の周り、つまりミクロのレベルでモノを考えがちです。だからこそ、かつてはそうした人たちも専門家の主張を信じたかもしれませんが、いつまで経っても自分の経済状況は改善しないし、自分の周りは悪くなるだけとなると、専門家の意見に耳を貸さなくなったとしても、当然かもしれません。

 実際、英国の国民投票でEU離脱に賛成票を投じた人たちと、米国でトランプを支持した人たちとの共通点を見ると、意外と多くの人が理由として、自分の収入減などの経済状況の悪化よりも、グローバル化で自分の街に色々な人種が住むようになって周りの環境が変わってしまったことを挙げており、昔の良かった時代に戻りたいと思っているのです。

正しさよりも共感できるかどうか
ネットは間違った考えも補強してしまう

 もう1つの意見は、ネットは真実の探求を阻害し、むしろ人がすでに持っている自分の意見や信念を、それが間違っていても補強してしまうことが影響した、という考えです。

 これまでも多くの心理学者が、人は多様な情報に直面すると、合理的に正しい情報を選択するよりも、思い込みやバイアスに従った選択、具体的には自分の考えに近い情報を選択し、それ以外の情報を避ける場合が圧倒的に多いことを証明してきました。

 ネット上では、こうした行動が確実に起きることになります。ニュースを提供するサイトが無限にあるので、自分の考えが偏ったものであったとしても、その考えにそぐわないニュースはどんどんスキップすれば、いずれ自分の考えに合ったニュースを発見できます。それを見て「自分の考えはやはり正しい」と勝手に確信し、ソーシャルメディア上でシェアすれば、ネット上でそうした偏ったニュースがどんどん拡散し、同じような考えの人たちの信念を補強してしまいます。