米大統領選挙においてトランプ候補が勝利したが、その後の市場の反応は、それまでの市場参加者の予想とはやや異なった。米国市場では株高と債券安が進み、他方、米国長期金利上昇に反応する格好でドルが上昇。ドル円も1ドル=110円を上回るに至った。
「政策のいいとこ取り」「トランプ氏は現実的な政策に回帰するためトランプリスクは杞憂」など、米国市場の動きを評する声はさまざまであるが、インフレ期待が高まっていることに相違はなさそうだ。
トランプ氏が唱える財政拡張が景気拡大に伴う「良いインフレ」を想起させるほか、移民抑制による労働力減少や報復関税などの政策が「悪いインフレ」をイメージさせることで、ひとまず「トランプ政権ならインフレ」との思惑が強まったといえる。
FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ抑制のために利上げペースを速めるとの思惑から長期金利が上昇したともいえよう。
ただし、大統領選以降のFF(フェデラルファンド)先物金利の上昇幅は限定的で、2017年に2度の利上げが織り込まれている程度。むしろ、今回の長期金利上昇に大きく寄与したのは、それより先のフォワード金利(将来の予想金利)上昇だ。