実際、各地の自治体からは、「ひきこもり」層に占める40代以上の割合は、すでに半数を超えるという実態調査のデータが、相次いで公表されている。

 これまで社会が目の前の課題を先送りにしてきたツケが、噴き出し始めたのではないか。様々な要因によって社会から撤退を余儀なくされ、関係性を遮断されてきた人たちの嘆きや叫び、存在そのものさえ、地域の中では潜在化していて、表に出てこない。

引きこもり対象年齢の上限は39歳
実態とかけ離れた国の実態調査

 それにもかかわらず、内閣府が9月に公表した「ひきこもり実態調査」では、引きこもりの対象年齢の上限を39歳に区切って、約54万人という数値を推計している。これがどれだけ現実とズレているかは、連載第267回で紹介した通りだ。

 この「机上の統計」を基に、いったい何の対策をするのか。そもそも人の人生を年齢で区切ることに、どんな意味があるのか。

「引きこもる」という行為は、今がどんなに絶望しかなくても、いつか何かが変わるかもしれない、誰かが待っているかもしれないと、どこかでまだ希望を見出しているから、生き続ける道を選択した人たちがすることだと思う。しかし、40歳を超えたとたん、実態調査や「ひきこもり」支援の対象から外される。そのことが、頑張って生き続ける道を選択してきた40代以上の人たちに与える影響は計り知れないものがあることを、どこまで認識できているのか。

 そこで、こうした「人としての人生」を考えてケアしていくプランを立てていこうと、長期化、高年齢化が進む引きこもる人たちの事例について、KHJ家族会は厚労省からの委託を受け、初めての本格的な実態調査に乗り出した。

 調査の対象者は、本人が40代以上で、かつ10年以上の引きこもり状態の経験がある人。KHJ家族会が、全国を6ブロックに分け、それぞれのブロックから10~15事例、計60~90事例を抽出し、長期化・高齢化する背景や効果的な社会参加支援策をヒアリングする。

 また、全国の自治体の生活困窮者自立支援相談窓口の中から6ヵ所を選んで、スタッフが訪問し、長期高齢化する本人への支援の実情を聞きとると共に、200ヵ所の自治体窓口に対して質問紙による調査を実施。背景分析を行うと共に、複合的な困難への効果的支援策や地域ネットワークのあり方を導き出す。