恋人を「相方」と呼ぶのはアリかナシか

お笑いコンビじゃないんだから……

 先日、飲みの場で知人女性が、突然「うちの相方が?」と話し始めた。お笑いコンビでも組んだのかと思いきや、話の内容から察するに、どうやら彼氏のことを「相方」と呼んでいるらしい。デジタル大辞泉によると相方には「パートナー」「相棒」といった意味があり、補説として「近年は若者を中心に、恋人や配偶者をこう呼ぶこともある」と記されている。

 テレビで活躍するお笑いコンビの影響で、相方という呼び方が広がったのだと思われるが、正確な起源は定かではない。おそらく、自然発生的に定着していったものだと考えられる。

 しかし、もともとは恋人に対して使う言葉ではないだけに「相方って言われると、『えっ? 普通の関係じゃないの?』って思ってしまう」(30代女性)と違和感を覚える人もいる。別にムカつきはしないけど、ちょっとだけ引っかかる、といった感じだろうか。この女性のように妙な勘ぐりをする人がいると、場の空気が微妙なものになってしまうこともある。

「彼氏、彼女」はセックスの手垢がついた表現

 なぜ、恋人のことを相方と呼ぶのだろうか。かつて彼氏のことを相方と呼んでいた別の知人女性に話を聞くと、「『彼氏』と呼ぶのには、気恥ずかしさがあった」と当時を振り返る。

「彼氏、彼女って呼び方はいかにも“男女の仲”って感じで嫌でした。もちろん、そういったこともするんですけど、私たちはセックスがしたいから付き合っているわけではないし、どちらかというと一緒に切磋琢磨する『相方』のような存在だと思っていたんです」

 価値観を共有できる相手と、人生を共に歩んでいく。そうした相手とは性的な関係を超えたつながりがあり、「彼氏、彼女」という手垢のついた表現で呼ぶのには抵抗がある、ということなのだろう。前出の30代女性の言う「普通の関係」とは一線を画したものなのだ。