「2020年売上高4兆円構想」の雲行きが怪しくなっている。14年の米ビーム買収で財務面の余裕は消えた。残り4年で4兆円構想を実現させるには、新たな買収資金を持ち株会社の上場で調達するほかない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 泉 秀一)

「2020年に売上高で4兆円を目指す」──。2年半前の14年5月、サントリーホールディングス(HD)の佐治信忠会長がぶち上げた計画は壮大過ぎた。

 当時(13年12月期)のサントリーの売上高は2兆0402億円。わずか7年間で売上高を約2倍にするというプランに、多くの社員が度肝を抜かれた。

 サントリーが米蒸留酒大手ビームの買収を発表したのは14年1月末。約1兆6000億円という巨額投資の勢いそのままに、佐治会長は心に秘めていた野望をあらわにしたのだ。

 だが、直近の通期決算である15年12月期の売上高は2兆6868億円(営業利益は1851億円)にとどまっている(図(1))。佐治会長が社長に就任した当時、01年の1兆4343億円と比較すれば大成長を遂げているが、それでも目標の4兆円までは1兆3000億円ほど足りない(図(2))。

「20年に売上高4兆円は無理ではないか」。昨年ごろから業界内外ではこんな声がささやかれ始めていた。

 それでも14年10月に創業家以外から初めて登用された新浪剛史社長は昨秋、本誌の取材に対し「20年の売上高4兆円は目安ではなく必達目標」と述べ、掲げた旗を降ろさなかった。

 ところが今年に入り、この「4兆円構想」に対する経営陣の姿勢が弱まっている。

 事実、グループの経営企画本部、財経本部、海外酒類事業であるビームサントリーの3部門を管轄する肥塚眞一郎専務取締役は10月、本誌の取材に「20年に4兆円という目標は、今は必達ではない。無理をして達成しても意味がなく、取締役会でも議論に挙がらない。社長は社員を鼓舞するために言ったのではないか」と語った。