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オジサンの憩いの街・新橋で“学生居酒屋”が大繁盛?
現役大学生だけで運営する「居酒屋あるばか」のパワー

三浦一紀
2011年2月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
(写真上)10席ほどで満席となるこぢんまりとした店内は、まさに隠れ家的な雰囲気。毎日3人の大学生がカウンター内で店を切り盛りしている。客層は20代から60代まで幅広い。(写真下)力を入れている自家製燻製。ベーコン、うずらの卵、チーズ、チョリソーなど。特にベーコンはジューシーで、口の中に肉汁が広がる。毎日店内で仕込みをしているため、仕込み時間には店内が煙だらけになるとか。

 JR新橋駅烏森口から徒歩3分。飲み屋が並ぶ路地裏の地下にある「居酒屋あるばか」。店内はカウンターのみで、10人ほどで満席状態。カウンター内の若い従業員が客とおしゃべりしながら、接客している。

 一見、普通の居酒屋の光景だが、実はこの店、現役大学生が運営しているのだ。もちろん、スタッフも全員大学生。大学生だけで全てを仕切っている「学生居酒屋」なのだ。

 代表を務める石塚泰斗さんは、すでにIT系の会社に就職が決まっている大学4年生。彼を中心に、信頼できる仲間で2010年5月頃からプロジェクトをスタート。9月8日にオープンし、現在は連日満席になるほどの、隠れた人気店となっている。

 お酒は焼酎がメイン。日本全国の銘柄を揃えており、あまり知られていない珍しいものも。また、料理は焼酎に合うようにオリジナルのものを用意。最近では、自家製の燻製に力を入れており、店内で仕込みを行なっているほどだ。そのほか、オリジナルの卵かけごはん(TKG)や焼きうどんなどのご飯物も揃っている。

 なぜ学生、しかも就職が決まっている4年生が居酒屋を運営しているのだろうか?

 「大学生が元気がないと言われている世の中で、もっと希望を持って生きていけるようにすることはできないかと思いました。そのときに、アルバイト環境をよりよくすることで、大学生が社会に対してもっと前向きに考えられるようになるのではと思い、色々模索した結果、飲食店の経営をするということになりました」(石塚さん)

 つまり、自分たちが社会に対してもっと前向きになれるような場所を、自分たちでつくってしまったというわけだ。メンバーは15人でスタート。うち4年生は11人。メンバー全員で資金を出し合い、毎月ごとに配当金を受け取るという仕組みになっている。

 新橋といえば、言わずと知れたおじさんたちの「憩いの街」。大学生がいきなり居酒屋を開店するには、ハードルが高い地域と言える。しかし、当初から学生ではなく社会人をターゲットにした居酒屋を予定していた。

 「あるばかは、学生がやっている居酒屋ということはあまりアピールしていません。居酒屋としての高いクオリティで、お客様に喜んでいただくことをコンセプトとしています。学生居酒屋と言ってしまうと、そこに甘えてしまう感じになるので」(石塚さん)

 当初はメンバーの知り合いのクチコミでやってくる客が多かったが、最近ではメディアに取り上げられることが増え、日本全国から出張を利用して訪れるサラリーマンや、同じ志を持つ大学生などが訪れることも増えているという。

 「メンバーももちろん、お客様や両親、色々な人に支えられていることを感じています。お客様からメニューやお酒、経営についてアドバイスをいただくこともあります。僕らも含め、皆があるばかのことを思ってくれているのを感じますね」(石塚さん)

 あるばかは、「ある、ばかな大学生」から付いた名前。学生が運営する居酒屋のため、4年生のメンバーはそろそろ“卒業”となる。今後あるばかはどうなるのだろうか? 石塚さんはこう語る。

 「将来的には、学生だけで代替わりしながらずっと続けて欲しい。卒業した後は僕らも口を出したりするかもしれませんが、経営に関する力はゼロ。次の代の学生たちに頑張ってもらいたい。そして、5年後10年後、ふらっとあるばかに寄って、飲んでみたいですね」

 現4年生のメンバーは、9月に店をオープンし、わずか半年ほどで卒業となる。しかし、その期間はかなり濃密であったことは想像に難くない。店は開いた。ある程度の売り上げのメドも立った。後はあるばかを継いでくれる後輩たちに託すのみ。まるで、甲子園を目指す高校球児のような爽やかさと切なさがある。

 新橋に立ち寄る機会があれば、一度訪れてみてはどうだろうか。場所がわかりづらいのと、席数に限りがあるので、できれば電話を1本入れてから訪れるのがいいだろう。そして、大学生と語り合いながらお酒や料理を楽しめば、彼らがどれだけ大真面目にあるばかを運営しているのかが、わかるはずだ。

(三浦一紀)


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