1日7時間半勤務、週休2日で終身雇用の正社員。ただし月給は1万5000円。

新入社員(ヤギ2頭)に配属辞令を読みあげるパソナグループの南部代表。

 この2月14日、人材派遣大手のパソナグループで入社式が行われた。南部靖之代表から辞令書を受け取ったのは、ヤギ2頭。

 パソナによれば、「癒し担当の社員として勤務し、当面は受付を担当する。夜間、休日は屋上で暮らす」のだとか。この日は、初仕事して、人間の社員とともに、バレンタインのチョコを配った。

 動物を社員として採用するケースとしては、IT大手の日本オラクルが1991年以来、「社員犬」として犬を社員にしているのが知られている。すでに現在は4代目にあたる社員犬がいる。

 ただし、こちらは週1回の出社で、普段はペットショップに滞在している。家畜を社員化したうえに、住み込みでの週5日勤務のケースは初めてだ。しかも、ヤギの平均寿命は10年以上あるため、終身雇用も大変そうだ。

 最近は「アニマルセラピー」といわれる、動物と触れ合うことで心身の健康維持を目指す手法も普及しており、それを会社でやっているということなのだろう。

 ちなみにヤギ2頭の勤務先は東京・大手町のパソナグループ本社にある“農場”。オフィス街のど真ん中に水田や野菜工場を設けて話題をさらった「アーバンファーム」だ。この農場の受付をし、社員や来客を癒すのだという。

 エコロジーも意識するとのことで、ヤギがオフィスのコピー用紙を食べるところまでは行かないが、アーバンファームの稲藁や葉っぱをヤギが食べる一方で、ヤギのフンは肥料になるという。

 南部代表はヤギを選んだ理由を「人に危害を与えず、飼いやすいから。殺伐としたオフィス街の潤いになれば。社員に、お客さんも癒されるでしょう」と語る。

 単なる話題集めと言えばそれまでだが、前出のアーバンファームも当初は「地価が高くて絶対ペイしない」と言われながら、今ではパソナグループの就農支援ビジネスの広告塔としてしっかり役目を果たしている。“ヤギ社員”も何かのビジネスの種に化ける可能性がまったく無いわけではない。なお、パソナグループでは、人間の社員と異なり、ヤギ社員の派遣は一切考えていないそうである。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)

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