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7つの知性を磨く田坂塾

頑張っても上司に評価されない、本当の理由

田坂広志 [田坂塾・塾長、多摩大学大学院教授]
【第17回】 2016年12月28日
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拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。
この第16回の講義では、前回に引き続き「技術」に焦点を当て、拙著『仕事の技法』(講談社現代新書)において述べたテーマを取り上げよう。(田坂広志 [田坂塾・塾長、多摩大学大学院教授])

同じ仕事をやっても差がついてしまう二人

 今回のテーマは、「頑張っても上司に評価されない、本当の理由」。このテーマについて語ろう。

 世の中の職場を見渡すと、仕事は頑張っているのだが、なぜか、上司や周囲からの評価が高くない、気の毒な人材がいる。

 なぜ、こうした人材が生まれるのだろうか?  そのことを考えるために、どこの職場でも見かけそうな、ある仕事のエピソードを紹介しよう。

 月曜日の朝、9時過ぎ。出社したばかりの同期の若手社員、鈴木君と田中君が自席で仕事をしている。

 すると、部長室から戻ったばかりの木村課長に、二人は呼ばれ、こう言われた。

 「鈴木君と田中君、緊急の仕事を頼みたいので、相談だ…。このA社とB社の資料、かなりの枚数で煩雑な資料だが、何とか今日の夕方5時までに数字を整理し、一覧表にして持ってきてくれないか。急遽、夕方6時からの経営会議で説明しなければならないので、大変な作業だが、よろしく頼む!」

 木村課長は、続けて言う。

 「このA社の資料は鈴木君が担当してくれ。B社の資料は田中君が担当で頼む。なお、それぞれ、午前中の作業をして、夕方5時までに一人では処理できないと思ったら、遠慮なく報告してくれ。場合によっては、他のスタッフにもサポートを頼むから…」

 二人は「了解しました」と答えて席に戻り、早速、作業に取り掛かった。木村課長の言うとおり、これはかなりの作業になる。そう思った二人は、昼食も、同僚に買ってきてもらったパンをかじりながら作業を進めた。

 午後、外回りから帰ってきた木村課長が、鈴木君と田中君を見ると、二人は、引き続き、頑張って作業を続けている。それを見ながら、木村課長がパソコンを開くと、鈴木君からのメールが入っている。

 「木村課長、何とか一人でできると思いますので、サポートは不要です。ご配慮、ありがとうございます」

 そのメールを読み、安心した一方で、木村課長は、田中君が気になったので、声をかけた。

 「作業は、大丈夫か…。必要ならば、サポートをつけるが?」

 それに対して、田中君、「大丈夫です。一人で何とかやれます」と答え、すぐにまた、時間を惜しむように、作業に戻った。

 木村課長も、自席で夕方の経営会議向けの資料を作っていると、4時過ぎに、鈴木君が席にやってきて、一言、報告した。

 「課長、これから最後の数字の確認に入りますから、お約束通り、5時には、一覧表をお渡しできます」

 それを聞いて、また、田中君が気になる。「彼の作業は大丈夫だろうか…。一人で何とかやれます、と言っていたが、自席で脇目も振らず作業をしている雰囲気は、かなり時間に追い詰められているのではないだろうか…」。そう懸念しながら資料作りをしていると、4時半過ぎに、田中君が、一覧表を持ってやってきた。

 「課長、予定より早く、一覧表ができましたので、持ってきました」

 「おお、早かったな。緊急の作業、ご苦労さん」と言うと、田中君、一礼して席に戻ろうとする。そこで、木村課長、気になって聞いた。

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田坂広志 [田坂塾・塾長、多摩大学大学院教授]

1951年生まれ。74年、東京大学卒業、81年、同大学院修了。工学博士(原子力工学)。87年、米国シンクタンク・バテル記念研究所客員研究員。同時に、米国パシフィックノースウェスト国立研究所客員研究員。90年、日本総合研究所の設立に参画。戦略取締役を務め、現在、同研究所フェロー。2000年、多摩大学大学院教授に就任。社会起業家論を開講。同年、シンクタンク・ソフィアバンクを設立。代表に就任。2003年、社会起業家フォーラムを設立。代表に就任。2008年、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムのグローバル・アジェンダ・カウンシルのメンバーに就任。2010年、4人のノーベル平和賞受賞者が名誉会員を務める世界賢人会議・ブダペストクラブの日本代表に就任。2011年、東日本大震災に伴い、内閣官房参与に就任。原発事故対策、原子力行政改革、エネルギー政策転換に取り組む。2012年、民主主義の進化をめざすデモクラシー2.0イニシアティブの運動を開始。代表発起人を務める。2013年、全国から3000名を超える経営者やリーダーが集まる場、「田坂塾」を開塾。「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という「七つのレベルの知性」を垂直統合した「スーパージェネラリスト」への成長をめざし、塾生とともに研鑽を続けている。著書は、知のパラダイム論、未来予測論、地球環境論、複雑系社会論、情報革命論、知識社会論、民主主義進化論、資本主義進化論、産業政策論、経営戦略論、マネジメント論、リーダーシップ論、戦略思考論、プロフェッショナル進化論、社会起業家論、社会的企業論、仕事論、人生論、詩的エッセイ、詩的寓話など、様々な分野において国内外で80冊余。(所感送付先:tasaka@hiroshitasaka.jp
◇主な著書 『知性を磨く - 「スーパージェネラリスト」の時代』(光文社) 2014
『人は、誰もが「多重人格」 - 誰も語らなかった「才能開花の技法」』(光文社)2015
『人間を磨く - 人間関係が好転する「こころの技法」』(光文社)2016

 


7つの知性を磨く田坂塾

多くの問題が山積する21世紀、目の前の現実を変革するために、我々は、思想、ビジョン、志、戦略、戦術、技術、人間力という「7つのレベルの知性」を、垂直統合して身につけ、磨いていかなければならない。知性を磨き、使命を知り、悔いのない人生を生きるために、いま、我々は何を為すべきか。現代の知の巨人が語る。

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