アメリカでの休暇中に感じた
スタバ快進撃の「なぜ」

米スタバを急成長させた「行列解消策」は日本でも流行るか米国のスタバの好業績の背景には、「行列に並ばなくて済む」アプリの成功がある。現地で実感した、日本では知られていないイノベーションの効果を考えよう

 私は毎年、年末はアメリカで過ごすことにしている。今回の記事はそこで感じたというか気がついた、アメリカの経済発展を支える原動力について、話をしたいと思う。

 ことの発端は、スターバックスコーヒーである。

 12月下旬、私のビジネスパートナーであるIBAカンパニーというコンサルティング会社の射場瞬代表から仕事のレポートを受け取ったのだが、その巻末の附属資料の中にあった、アメリカのスターバックスコーヒーのアプリが大きな成功を集めているという記述が目についた。

 確かにそうなのだ。ちょうど1年半前にアメリカで集客テクノロジーのカンファレンスに参加したときも、スタバのアプリは消費者によく使われるアプリの成功例として引き合いに出されていた。それからさらに浸透し、同社の業績に大きなプラスの影響を与え始めた。

 具体的に数字を抜き出すと、全米のスターバックスの店舗売上の21%がスマホアプリからの注文となっていて、証券会社のアナリストの分析によれば、近年スタバの売上が過去5年間で最大の伸びを示しているのは、このスマホアプリ経由の売上増が貢献しているという。

 そこで「なぜそんなことが起きているのか」を体験しようと思い、年末をアメリカで過ごす間、スタバの店舗を観察してみることにした。

 ここで紹介する「Mobile Order & Pay」というアプリは、まだ日本では配信されていない。簡単に機能を説明すると、予めスターバックスのプリペイドカードをスマホに登録して支払いができる状態にしておいて、お店に入る前にスマホでドリンクの注文と支払いを済ませておく。そうしてお店に入り、レジではなく直接コーヒーを受け取るカウンターに行くと、自分のオーダーしたコーヒーをすぐに持ち帰ることができるというものだ。

 ここが今回の記事のポイントなのだが、日本に暮らしている人は、「スターバックスでこんなアプリが登場したら、過去最高の伸びを示すくらい売上が上がったそうだ」というニュースを聞いても、何のことかわからないだろう。