原油価格の上昇が加速している。2月23日には原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が、1バレル100ドル台に乗せた。100ドル台に乗せるのは、2年5ヵ月ぶりのことだ。原油価格の高騰が長引けば、回復基調にある世界経済に、冷水を浴びせかねない。今回の上昇はなぜ起こったのか、価格の高騰は日米中の経済にどのような影響を与えるのか。日本総研調査部マクロ経済研究センター所長の岡田哲郎上席主任研究員に、今後のシナリオを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン客員論説委員 原 英次郎)

――昨年半ばから徐々に上がってきた原油価格が、ここへきて急激に上昇した要因を、どのように捉えていますか。

おかだ てつろう/研究・専門分野は内外マクロ経済・金融。1988年3月神戸大学経済学部卒業、同年4月住友銀行入行、93年3月神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、94年4月日本総合研究所調査部、2000年7月 主任研究員、07年7月調査部マクロ経済研究センター所長。

 ここもと原油価格が大きく上昇している背景には、北アフリカ・中東情勢の不安定化がある。発端はこの1月に起こったチュニジアの政変だったが、これがエジプトに飛び火し、さらに周辺国にも波及していった。特に局面が大きく変わったのは、リビアの政情不安が深刻化してからだ。

 同国が引き金となったのは、原油の埋蔵量がアフリカ最大、生産量は中東・アフリカ地域で第9位に位置する主要な産油国であると同時に、政治的にアメリカのグリップが効かない国という要素が大きかったのではないか。

 エジプトやバーレーンなどは、アメリカと軍事面でのつながりもあり、政治的な影響力を行使できたが、リビアは長年にわたってアメリカと敵対関係にあった。そういう国が混乱に陥ったことで、穏当な着地が見通し難く、先進諸国への石油供給の先行きに不透明感が高まり、供給不安が飛躍的に増大した。