3月4日(金)に発表された2月の米国雇用統計を受けて、米ドルは一時83円まで上昇しました。ところが、結果発表当日の米国の金利がそれほど上がらず、むしろ低下に転じたこともあって、米ドルは反落しました。
ただ私は、雇用統計の結果は悪くなかったし、基本的に米ドルはそれほど下がらず、上がっていくと考えています。
米ドルの売りポジションは限界圏に達している
冒頭のように考えている理由は、米国雇用統計の結果とは別に、同じ日に発表されたCFTC統計からの判断が影響しています。これは、3月1日(火)現在のヘッジファンドなど主要な投機筋のポジションに関するデータです。
それによると、米ドルのポジションが、かなりの「売られ過ぎ」限界圏に達している可能性があることがわかったのです。
私はこのCFTC統計から、非米ドル主要5通貨のポジションをもとにして米ドルのポジションを試算する方法をとっていますが、それによると、これまでの米ドルの売り越しは20万枚前後が限界圏となっていました。
3月1日(火)現在の米ドルの売り越しが、まさにその20万枚を超えてきており、経験的には、米ドル売りはすでに限界圏に達していると言えそうです。
投機筋の米ドル売りの継続は難しくなっている
このように、米国雇用統計の結果とは別に、米ドル売りがすでに限界圏に達し、米ドルが買い戻されるタイミングに入った可能性があったわけです。
そのようなタイミングで米国雇用統計の結果が発表され、結果は決して悪いものではなかったわけですから、米ドルが買い戻されるかはともかく、米ドル売りの継続は厳しくなっているのではないでしょうか?
米ドルの売り越しが、今回のように20万枚前後で拡大一巡となり、米ドル買い戻しへと転換したことは、これまでに3回ありました。2004年11月、2005年5月、2007年10月で、代表的な投機筋であるヘッジファンドの中間・本決算期末のタイミングと重なっています。
その意味では、米ドル売りから米ドル買いへの転換が、米ドルの売り越しが20万枚前後まで拡大したことの意味が大きかったのか、それとも、5月、11月というタイミングの意味が大きかったのかは微妙なところです。
要するに、今回はまだ、ヘッジファンドなど代表的な投機筋の決算まで間があるので、米ドル売りのリスクテーク拡大を簡単に転換しない可能性もなくはないだろうと思っているのです。
ただ、投機筋がすでに、かなりの米ドル売りのリスクをとっているということに変わりはありません。そのような状況で、米ドル売りを正当化するような材料が出るなら、米ドル売りリスクを維持することは可能でしょう。
しかし、今回発表された米国雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)、失業率とも決して悪い結果ではありませんでした。その意味では、米ドル売りを正当化する材料ではなかったと思います。
すでにかなりの米ドル売りのリスクを取っている状況で、雇用統計の結果を含めて米ドル売りを正当化できない材料が増えているということからすると、米ドル売りの継続は難しくなっていると思います。