ドル安時代に浮上する「スイスフラン」の存在感、安全資産は円からシフト?Photo:PIXTA

2025年に入ってドル安進行
安全資産に変化の兆し

 2025年に入ってドルは主要通貨に対して基本的に全面安となっている。ドル円は1月に付けた1ドル=159円手前から4月に140円割れを記録し、ユーロドルは1ユーロ=1.01ドル台半ば近辺から4月に1.15ドル台後半へと上昇した。

 昨年はドルが全面高となったため、その反動という面もあるが、ドル安が進んだ最大の要因はトランプ政権の打ち出す経済・関税政策を受けた先行き不透明感である。トランプ大統領が4月2日に発表した「解放の日」関税に対して、米国際貿易裁判所は5月28日に差し止めを命じたが、トランプ政権は即時に上訴しており、不透明感は払しょくされていない。

 こうした先行き不透明感は、投資資金の安全資産へのシフトを促した。安全資産とされる金価格をみると、NY金先物が年初の1オンス=2700ドル前後から4月に3500ドル超まで上昇し、その後は3100-3500ドルを中心とした高い水準での推移が続いている。

 投資資金が安全資産にシフトする動きの中で、4月から米国債からの資金離れという大きな変化が生じている。米国債は4月2日(関税発表の日)まで資金の逃避先として選択されていたが、この日を境に投資資金の米国離れが続き、米ドル安、米株安、米債安のトリプル安が進んだ。3.85%まで低下した米国債利回りは5月後半に4.62%を付けるなど、米債安傾向が強まっている。