社員の「仮説検証力」を
鍛える環境整備

 とは言え、五十嵐社長も、手をこまねいているわけではありません。
 みなし残業制度を採用したり、最需要期にはパートを増やすなどして、労働環境の改善に尽力しています。

 3年前までは、月に「70~80時間」も残業をしていた社員が、現在は「40時間」にまで減っています。

「私たちの商売では、『1時間あたりいくら稼げているか』がひとつの指標になります。月の総工賃に対して、労働時間が増えるほど、1時間あたりの作業工賃は下がります。その指標をあらかじめ計画に落とし込んで、『今月は、時間あたりの生産性がどうだったのか』を常にチェックしています。
 残業が増えれば増えるほど、単価が下がるので、『どうして今月は下がったのか』を検証し、『では、どうすれば下がらずにすむのか』の仮説を立てて実行しながら、よりよい指標に持っていけるように取り組んでいます」(五十嵐社長)

 五十嵐社長は、生産性を上げる(1時間あたりの工賃を上げる)ための土台として、環境整備の有効性を強く感じています。

「環境整備の持つ『仕事をしやすくする環境を整えて備える』の概念は、生産性を高くしてくれます
 工具ひとつを取っても、ここからあっちまで行って、20歩かかって作業をするのと、一歩、二歩で取って作業をするのとでは、作業のスピードが変わります。
『今まではひとりでドアの塗装をするのが当たり前だったが、2人でやってみると時短になるのではないか』など、社員が自発的に試行錯誤するようになったのも、社員の間に環境整備の概念が浸透しているからだと思います」(五十嵐社長)