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岸博幸のクリエイティブ国富論

元官僚だから分かる“主婦年金問題”迷走の深層
民主党はいかにして担当課長に責任を押し付けたか

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第130回】 2011年3月11日
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 3号主婦年金問題が国会で非常に大きな問題となっています。年金の切り替えを忘れて保険料が未納となっている主婦をどう救済するかという問題も当然重要ですが、この問題での政権の対応を見ていると、民主党が叫んできた“政治主導”がいかにいい加減なものかが浮かび上がってきます。

課長通知という形式に至る経緯が重要

 この問題については詳細に報道されていますが、問題点を明確にするためにも、経緯を簡単に振り返っておきます。

 今回の3号主婦年金問題への対応の方向性(過去2年分の保険料を払えば、それ以前の未納分についてはチャラにする)については、当時の長妻厚労大臣の下で昨年3月に開催された年金記録回復委員会での資料(「記録問題への対応策」)ですでに明示されていました。それを受けて、昨年12月に細川厚労大臣の下で、対応の方向性が“課長通知”という形で発出されました。

 今回の問題への対応は、年金に関する国民の権利義務関係を部分的に大きく変更するのみならず、多額の財政負担が必要となるものであり、かつ3号年金に切り替えて真面目に保険料を払ってきた主婦との間で不公平が生じるなど、多くの問題があります。

 従って、法治国家である日本においては、こうした影響の大きい対応を行なう場合、法改正という形で国会での審議を経て決定されるべきです。それにもかかわらず課長通知という最も軽い形で対応が行なわれました。

 ちなみに、法令や行政文書などをフォーマルさの度合いで並べると、法律、政令、省令、通達(=通知)の順番になります。法律は国会での審議が必要、政令なら国会審議は不要だけど閣議決定が必要、省令なら省内での審査・決裁が必要であるのに対して、通達の中でも課長通知というのは一番軽いものであり、省内での公式な決裁も不要で、担当の課の内部で手続きが完結します。

 つまり、本来は影響の大きさから最もフォーマルな対応をすべきだったのが、行政的にもっともカジュアルな対応で済まされていたのです。そう考えると、どういう意思決定を経て課長通知で対応することになったのかを究明することが、今回のような問題の再発を防ぐためにも重要ではないでしょうか。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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