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田中均の「世界を見る眼」

日本を取り巻く地政学リスク、2017年を展望する

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第63回】 2017年1月18日
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中長期展望に基づいたグランドデザインがなければ日本の将来的繁栄へのリスクは高い

米国──トランプ政権の三大内在リスク

 新大統領が就任して半年から1年は「ハネムーンピリオド」として議会やメディアも大統領に好意的な態度をとるのを常とするが、トランプ政権とはこの期間にも尋常でない摩擦を生むリスクがある。先般の記者会見で自らの意に沿わない報道をしたとCNNの質問を拒絶したことに象徴的に示されるように、メディアとの関係は波乱含みである。

 特に今後の「利益相反」問題の推移は注意を要する。トランプ大統領も多くの閣僚も広範な事業を営んできており、利益相反を巡り厳しい批判を生む可能性がある。議会との関係でも、共和党が上下両院の多数を占めているとは言え、例えば財政や貿易政策あるいは対露政策を巡り伝統的な共和党の政策とは相いれない場面が容易に想像され、厳しい対峙となる可能性は否定できない。メディアや議会との敵対的な関係は米国の内政を揺さぶる。

 次にトランプ政権の政治手法である。トランプ政権は、これまでのプロフェッショナルな統治手法ではなく、選挙キャンペーンから引き続きポピュリスト的なアプローチをとる可能性がある。大統領選挙での勝利後もツイッターを多用し、特定企業を名指しした批判や対中牽制などに加え、「敵か味方か」という大衆に分かりやすい二分法で衝動的なメッセージを送り続けた。果たして大統領として同じような手法を多用していくのか。それとも十分な吟味が行われたうえで政策が形成されていくのか。前者であれば米国だけでなく世界の混乱は止まらない。

 国際秩序への最大リスクは米国のリーダーシップが揺らぐことである。これまで米国は(1)強大な軍事力を、秩序維持のために使う覚悟を持ってきた、(2)強い経済力を維持し、自由貿易を含む自由主義経済体制を守ってきた、(3)地球温暖化や反テロ、抗不拡散など世界の課題設定を行いルール作りに中心的役割を担ってきた、(4)民主主義のモデルとして存在してきた。「米国第一」主義は、米国さえよければいいと捉えられ、リーダーシップの否定に繋がる。特に、民主主義のモデルとしての米国の存在が揺らげば揺らぐほど、中国やロシアは自国の体制が秩序維持に効果的であると喧伝していくだろうし、第二次世界大戦後続いてきた自由民主主義の価値観さえも問われることとなる。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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