「なれる最高の自分」を目指せ

 前回は年頭に当たって、「素直で謙虚」という原点に立ち戻ることが重要であるという話をしました。その上で経営者は、常に高みを目指さなければなりません。

数字目標ばかり語る経営は行き詰まる小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

「良好(グッド)は偉大(グレート)の敵である」

 これは「ビジョナリー・カンパニー(2) 飛躍の法則」(ジム・コリンズ著)の冒頭にある言葉です。

 会社がそこそこに成功して「グッド」になると、経営者はそこそこぜいたくな暮らしとある程度の名士という肩書きを手に入れることができます。とくに地方ではもてはやされて、仕事とは直接関係のない付き合いも多くなるでしょう。もちろん、都会でも同様のことがあります。

 その環境で満足してしまうと、経営者自身のレベルアップは望めず、社員の向上心も薄れ、会社の成長が止まってしまい、知らぬ間に激変する市場から取り残されるかもしれません。

 そうならないよう経営者にはグッドな現状に満足せず、「なれる最高の自分」を目指して努力し続け、「なれる最高の会社」をつくる義務があります。

 会社には「お客さまに良い商品・サービスを提供して社会に貢献する」「働いている人が活かされ幸せになる」という会社の目的(存在意義)がどこの会社にもあります。

 その目的(ビジョン・理念)をお題目にしないために、経営者自身が高い志を持ち、その体現者とならなければいけません。大企業であっても、中堅・中小企業であっても、会社をグレートにできるのは経営者しかいません。

 もちろん経営者だけが「高い志」を持って努力しても、会社の能力は高まりません。社員にも常に「なれる最高の自分」を目指させるとともに、「良い仕事」に集中するように仕向けなければなりません。「良い仕事」とは(1)お客さまが喜ぶこと、(2)働く周りの仲間が喜ぶこと、(3)工夫です。

 一方で経営者は、会社の将来の具体的な姿を示す必要があります。漠然とした将来像ではなく、例えば5年後にどういう会社を目指しているのかということを明確に示すのです。

 そのために目標とする数字を設定しなければなりませんが、「数字のため」だけでは本末転倒です。