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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国の最高裁トップが「司法の独立」を否定した理由

加藤嘉一
【第94回】 2017年1月31日
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西側の三権分立等を
阻止する主張

 中国の「将来的な方向性を占う」という観点から、2017年に入り私が注目した案件がある。習近平総書記率いる中国共産党が、これからこの国を「どこに導いていくのか」、「どう導こうとしているのか」という問いに関わるテーマである。

 1月14日、北京で全国高級法院院長会議が開催された。全国に散らばる裁判所の長官が首都に集結した席で、日本の最高裁にあたる最高人民法院の周強院長が談話を発表した。以下のような点を主張し、各地から集まった部下たちに指示を与えた。

 「西側の“憲政民主”・“三権分立”・“司法独立”といった誤った思想の影響を断固として阻止しなければならない」

 「中国共産党による領導、中国の特色ある社会主義の法治と司法制度を否定する誤った言動とは断固として闘争を繰り広げる。西側の誤った思想と司法の独立という“トラップ”にかかってはならない。断固として中国の特色ある社会主義法治の道を進むのだ」

 私から見て、少なくとも制度上は司法の頂点に立つ、司法の“神聖性”と“純潔性”を死守しなければならない人間が、このような赤裸々な発言をするのは極めて異例である。

 中国の政治体制が西側のそれとは相容れないこと、中国において司法は実質的に政治に服従する運命にあること、中国共産党は西側の三権分立を党の権威を脅かす存在として警戒していること、などは自明である。これまでもそうであったし、これからもそうであろう。今更それを確認したり、議論したりする余地も意義も小さいように思われる。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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