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岸博幸の政策ウォッチ

トランプの下で米国製造業が復活できない理由

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第50回】 2017年2月3日
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Photo by Keiko Hitomi

 トランプが大統領に就任して3週間が経ちました。この短い間にオバマケアの停止、TPP脱退、メキシコとの諍い、中東7ヵ国の国民の入国禁止など、矢継ぎ早に極端な政策が打ち出されたので、米国では世論をはじめあらゆるところが混乱を極めています。

 それはそれでワイドショー的には面白いのですが、トランプの経済政策の方向性が明確になりつつある中で、それでトランプが目指す製造業での雇用の維持・復活が実現できるのでしょうか。

トランプが長期的に雇用を
維持できない経済学的な理由

 この点について、米国や欧州の専門家・識者の論考をざっと概観したところ、だいたい見解は一致していました。「短期的にはある程度の成果を出せるだろうけど、長期的には逆に米国の製造業の競争力を弱めて雇用も減少させるだろう」となります。

 短期的に成果を期待できる理由は簡単で、トランプが目指す大規模な減税と公共事業が実現できれば、経済全体がさらに良くなるので、製造業にもプラスになるというものです。かつ、企業は自らのブランドや名声を維持したいので、トランプのツイッターで名指しで非難・恫喝されたら、工場の海外移転の凍結、国内での雇用の増加に取り組まざるを得ないという面も指摘されています。

 これに対して、長期的にはうまく行かないと考えられる根拠としては、大別して2つの考え方がありました。

 1つは、マクロ経済学のアプローチです。減税や財政拡大により財政赤字が拡大すれば、金利の上昇を招くので、当然ながら為替市場ではドル高が進むことが予想されます。ドル高は米国製造業の国際競争力の低下をもたらすので、雇用も長期的には増えるどころか減少するだろうというわけです。

 ちなみに、米国は1980年代のレーガン大統領の時代に、すでに同じことを経験しています。軍事支出の増大と減税により金利の上昇とドル高を招き、米国の雇用に占める製造業の割合は加速度的に減少を始めました。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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小泉政権時代に竹中平蔵氏の秘書官を務め、数々の構造改革を立案・実行した岸博幸氏がテレビや新聞が決して報じない知られざる政治の裏側を暴きます。

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