米国利上げの「回数」が決め手に

もちろん、この数字はさまざまな要因に影響を受ける。では、ここから先、ドル高・円安が「どの程度まで進むか」については、どう考えればいいだろうか?

日米双方の経済政策に大きな変化がなければ、為替相場の動向を最も左右するのは、FRBがどれくらい金融を引き締めていくかであり、米国の政策金利(FF金利)を上げる回数である。つまり、経済に対するブレーキをどれくらい踏み込んでいくかということだ。

この意思決定は、FRBの理事7名と各地区の連邦準備銀行総裁5名から構成されるFOMC(連邦公開市場委員会)で下される。利上げについてはさまざまな見方があるが、「年2回ペース」なのか「年3回ペース」なのかで主要メンバーのあいだでも意見が割れているのが現状だ。

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これまでFOMCでは、FF金利の誘導水準を2015年末に0.25~0.5%に、さらに2016年末に0.5~0.75%に引き上げている。つまり、「1年に1回、0.25%ポイントずつ」という具合いに、きわめて緩やかなペースでブレーキを踏んできたわけだ。

もしもチャイナショックやBrexitのような経済減速のリスク要因が見られれば、直ちにFRBは利上げに慎重な姿勢を見せるはずだ。一方、国内経済がこのまま堅調で、国外にも景気下振れリスク要因がなければ、年3回の利上げは十分にあり得る。

そうした外的なショック以外に利上げ回数を左右するのは、米国の経済成長率・インフレ率・失業率といった経済統計である。たとえば、米国の成長率がここ数年続いていた2%程度の水準から上振れ、インフレ率も2%の目標水準を超えてくるような状況になれば、FRBが利上げを先送りする理由はなくなる。

そして、米国経済が堅調な成長を見せるかどうかは、トランプ大統領の拡張的な財政政策がしっかり実現されるかどうかにかかっている。減税などが公約どおりに実施されて効果を発揮すれば、米国の成長率は4%近くになり、インフレ率も2%を超えてくるだろう。失業率も安定的な回復を見せるはずなので、年3回の利上げシナリオがかなり現実味を帯びてくることになるはずだ。

利上げ回数とドル円の関係はどうなるだろうか? イエレンFRB議長が現状で想定していると推察されるのが年2回の利上げだが、この場合、ドル高・円安は比較的緩やかに進むと予想される。2015年半ばにつけた1ドル125円が目安になるだろう。一方、私が想定しているように、トランポノミクスが積極的に推進され、FRBが3回以上の利上げを行うことになれば、一段のドル高・円安がもたらされる可能性が高く、1ドル130円台も射程内に入ってくる。