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ポスト3.11の論点 日本と日本人の選択肢

東日本大震災から1ヵ月
生きる意味を揺さぶられた30日間
われわれはいま何を問われているか

原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]
【第2回】 2011年4月11日
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 あの日から、ちょうど1ヵ月が経った。2001年の9.11がアメリカの世界観を変えたように、3.11からわれわれの世界を見る目は、大きく変わったように思う。

 アメリカにおける世界観は90年代の冷戦の終結による平和の配当から、サミュエル・ハンチントンが予言した『文明の衝突』へと変わり、ときのブッシュ政権はアフガン戦争から、果てはイラク戦争にまで突っ込んでいった。では、3.11が我々にもたらしたものは何だろうか。それは文明に対する「不信」かもしれない。

暴きだされた欺瞞と
一筋の光明

 世界で最も文明の進んだ先進国の一つでありながら、巨大地震を予知することはできず、堤防も防潮堤や水門も、巨大な津波にいともたやすく乗り越えられてしまった。そして、われわれの豊かさ、利便性、効率性を支えてきた巨大なシステムが、あの時を境に恐怖の源泉となっている。原子力の専門家なる人々の楽観的な見立てはことごとく外れ、完全に信頼を失った。福島第一原発は、いまもなお近隣の土地を殺し、海を殺し続けている。

 そして、電力不足で右往左往する大都会は、その利便性と生産力を支えるためのリスクを、補助金という巨額の札束で、田舎の町や村に押しつけていたという構図を、目の前に突きつけられることとなった。

 その一方で、われわれが光を見出したのは、自らの犠牲を顧みず自分たちの責任を果たそうとした人々の存在であり、互いに乏しきを分かち合い、助け合う被災者たちの「絆」であった。テレビでインタビューを受ける自治体の長たちから、最初に口を突いて出てくる言葉は、全国からの支援に対する感謝である。NHKで見た老婆は、肉親が行方不明になっていながら「ご迷惑をおかけしております」とマイクに向かって答えていた。私はこの言葉に返す言葉を見出せない。

 この三つを前提とするならば、われわれが学んだことは、日本が3.11までの旧社会へ復帰することでよいのかということであろう。言い換えるならば、日本人が考える豊かさや幸せとは何かが問われていると言ってよい。

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原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]

1956年生まれ、佐賀県出身。慶應義塾大学経済学部卒。
1981年東洋経済新報社に入社。金融、証券、エレクトロニクスなどを担当。
1995年『月刊金融ビジネス』、2003年4月『東洋経済オンライン』、
2004年4月『会社四季報』、2005年4月『週刊東洋経済』の各編集長などを経て、2006年同社を退社。
2010年3月ダイヤモンド・オンライン客員論説委員、2011年10月編集長、2015年1月より現職。
主な著書に『銀行が変わる?!』(こう書房)、『素人のための決算書読解術』(東洋経済新報社)。

ポスト3.11の論点 日本と日本人の選択肢

東日本を襲った未曽有の大震災そして原発事故。3月11日を境に、日本人の目の前に広がる世界は大きく変わってしまった。政治経済から企業経営、そして生き方まで、ポスト3.11の論点と選択肢を識者とともに考える。

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