東日本大震災によって日本列島は地震や火山噴火が頻発する「大地変動の時代」に入った。その中で、地震や津波、噴火で死なずに生き延びるためには「地学」の知識が必要になる。京都大学名誉教授の著者が授業スタイルの語り口で、地学のエッセンスと生き延びるための知識を明快に伝える『大人のための地学の教室』が発刊された。西成活裕氏(東京大学教授)「迫りくる巨大地震から身を守るには? これは万人の必読の書、まさに知識は力なり。地学の知的興奮も同時に味わえる最高の一冊」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。

日本の火山の今後
――日本には全国に火山がありますが、近畿、中国、四国にはなぜか活火山はなく、休火山や死火山ばかりです。未来永劫、活火山にならないと考えていいのでしょうか?
未来永劫ということはありません。1500万年前の日本列島は大陸にくっついていたわけだから、そういう意味では何億年のスケールではまったく予想がつかない。
3~4億年も経てば大陸はもう1回全部くっつきますからね。それはちょっと見てみたいなあ。
だから活火山になる可能性はあるけれど、現状だと、この先1万年ぐらいは活火山になりません。
この1万年という数字は活火山の定義で、1万年以内に噴火したものを活火山といいます。
1万年は長すぎるにしても、1000年以内、100年以内に活火山になることはないでしょう。
休火山、死火山はもう使わない
あとは活火山の知識として、たしかに近畿や四国に活火山はありませんが、中国地方は島根県の三瓶山、山口県の阿武火山群といった活火山があります。
それと言葉の問題ですが、休火山、死火山という言葉は使わなくなりました。かつて富士山は休火山と言われていたけれど、いまは、そう表現はしません。
いまは活火山とそれ以外というわけかたです。休火山、死火山は定義ができないのです。
先ほど1万年以内に噴火したものを活火山というと紹介しましたが、それなら、それぐらい噴火していないものは休火山、死火山と言ってもいい。
でも、仮に死火山が噴火したら、死んだ人が生き返る感じで、あまりイメージが湧かない。
だから、僕も活火山とそれ以外というわけかたがいいと思います。 なにより、休火山や死火山というと、その言葉に安心して、もう噴火しないという感じになるでしょう。
それは防災上、困ります。僕のように「これから噴火に注意してください」という立場からすると、活火山にだけ注目してほしいのです。
火山活動とは?
――火山活動が続いているということはマグマを噴き出して地球を冷やしているということですが、それが収束して火山活動がなくなれば、地球は安泰な状況が続くのでしょうか?
これはかなりスケールの大きな話で、地球が冷えているという過程での一つの事象が火山活動です。
地球の熱が核からマントルに移って、マントルから地殻に移って、マグマだまりから噴火するという流れです。
それで、火山活動がなくなれば、違う表現をすると地球が冷え切ったら、地球は安泰な状況が続くのかというと、それはそうです。
つまり熱がなくなればすべてが止まる。たとえば金星とか火星のような状態です。プレートも止まって地震がなくなるかもしれない。
地球が死の星になる日
でも、それはどういうことかというと、地球は死の星になるということです。
また、別の面から考えると、太陽は寿命の100億年のうち50億年経ったところで、今後太陽の活動が大きくなって、やがて地球は太陽に飲み込まれる。
10億年経つと地球上の水がなくなるし、40億年も経てば完全に太陽に飲み込まれるわけです。
火山活動が収束するのには長い年月が必要で、同じようなスケールで考えると、今度は地球の外の問題もあるということです。
参考資料:「富士山の噴火って遠い遠いと思っていたけど、近いうちに起きると思わないといけないのですか?」…京大名誉教授の「驚きの答え」とは?
(本原稿は、鎌田浩毅著『大人のための地学の教室』を抜粋、編集したものです)
京都大学名誉教授、京都大学経営管理大学院客員教授、龍谷大学客員教授
1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。通産省(現・経済産業省)を経て、1997年より京都大学人間・環境学研究科教授。理学博士(東京大学)。専門は火山学、地球科学、科学コミュニケーション。京大の講義「地球科学入門」は毎年数百人を集める人気の「京大人気No.1教授」、科学をわかりやすく伝える「科学の伝道師」。「情熱大陸」「世界一受けたい授業」などテレビ出演も多数。ユーチューブ「京都大学最終講義」は110万回以上再生。日本地質学会論文賞受賞。