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逆境から生まれるイノベーション
【第2回】 2011年4月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
加藤徹生 [社団法人wia代表理事]

「クラウド型技術」が大震災に呼応する【前編】
――災害情報を瞬時に共有する「sinsai.info」の力

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 これまでも静かにシェアを拡げてきたソーシャルメディア。だが震災という危機の中で、その可能性は突如として浮き彫りになっている。前回の記事では、その様子をアメリカで活躍する社会起業家の目線から述べた。

 今回からは視点を変えて、震災の中で生まれた日本人の自発的な動きにフォーカスをしていく。まずは、震災後いち早く稼動し、現在も災害情報を編集・共有し続ける「sinsai.info」が演じたドラマとその可能性の検討から始めよう。
 

南相馬市で人を救った「sinsai.info」
――クラウド型技術が起こした奇跡


「南相馬市の赤坂病院、雲雀ヶ丘病院の患者、職員ともに避難できず苦しんでいます。マスコミや関係期間を通じ救出を呼びかけてください。よろしくお願いします。食料もなく薬もあと数日しかありません」 雲雀ヶ丘病院

 福島県南相馬市。津波よって壊滅的な被害を受けた町だ。町の一角に立つ病院は何とか持ちこたえたものの、病院の周囲の交通網は遮断され、食料も水も尽きかけていた。クラウド型の情報集約サイトに救援を求める投稿が寄せられたのは、まさにそんなタイミングだった。

実際に「sinsai.info」に寄せられた救援要請。
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 そしてこの救助要請は、ソーシャルメディアを介して患者の救援につながっていく。

「知人から聞き、今社内で関係各所に電話して救出してもらうように連絡します。できることがあれば言ってください」

「先程自衛隊福島本部 福島地区援護センターに連絡しました。担当は佐藤さん。 救出してくれると言っていただきました。病院なのでできるだけ早く対応するはずです。(中略)食料と薬がないことは伝えました。できることがあれば言って下さい。先生や看護関係者の皆さんも大変でしょうがなんとか、がんばってください」

 こうしたやりとりの結果、患者達は無事に都内の病院に避難することができたという。このやりとりは、災害情報を集約し、地図を介して共有するウェブサイト、「sinsai.info」の中で起こった。

被災者と支援者のためのメディア誕生
――ツイッターにはない「情報の集約」という強み

 震災以降、このウェブサイトでは、救援情報から道路状況、ライフラインの復旧に至るまでの幅広い投稿が1万件以上集まり、累計数十万人もの人がこのサイトを活用した。この災害情報集約サイトは、「どこで何が起こっているのか」を地図上に可視化する被災者と支援者のための新しいメディアだ。

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加藤徹生 [社団法人wia代表理事]

社団法人wia代表理事/経営コンサルタント。
大学卒業と同時に経営コンサルタントとして独立。以来、社会起業家の育成や支援を中心に活動する。 2009年、国内だけの活動に限界を感じ、アジア各国を旅し始める。その旅の途中、カンボジアの草の根NGO、SWDCと出会い、代表チャンタ・ヌグワンの「あきらめの悪さ」に圧倒され、事業の支援を買って出る。この経験を通して、最も厳しい環境に置かれた「問題の当事者」こそが世界を変えるようなイノベーションを生み出す原動力となっているのではないか、という着想を得、『辺境から世界を変える』を上梓。
2011年6月末より、東北の復興支援に参画。社会起業家のためのクラウドファンディングを事業とする社団法人wiaを、『辺境から世界を変える』監修者の井上氏らとともに9月に立ち上げた。
twitter : @tetsuo_kato


逆境から生まれるイノベーション

2011年3月11日。

巨大地震と大津波による壊滅的な被害によって、ほぼすべてのインフラと行政サービスが機能麻痺に陥る中、異彩を放った「新しい動き」があった。

様々なクラウド技術、ツイッターやフェイスブックなどの「ソーシャルメディア」、災害情報や支援情報を瞬時に集約した「クラウド型技術」、そして寄付市場で起こりつつある変動。

本連載では、震災という逆境の中でこれらの技術が劇的に進化を遂げる様を描き出し、そこから、日本の新たな社会像を模索していく。

「逆境から生まれるイノベーション」

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