ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
世界のエリートがやっている 最高の休息法
【第28回】 2017年3月6日
著者・コラム紹介バックナンバー
久賀谷 亮

「老いても進化する脳」が人生100年時代には求められる
【特別対談「脳科学×アンチエイジング」】医師が教える正しい年の重ね方(第2/3回)

1
nextpage

最高の休息法』著者で精神科医の久賀谷亮氏と、抗加齢医学の専門家・白澤卓二氏による対談の第2回。人間の寿命が延びていく中、私たちにはどんな新たな課題が立ち現れてくるのだろうか?(構成/前田浩弥 撮影/宇佐見利明)

「老後をどう生きるか」に
迷う人が増えている

白澤 卓二(しらさわ・たくじ)医学博士。千葉大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。
順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授などを経て、白澤抗加齢医学研究所所長、お茶の水健康長寿クリニック院長、米国ミシガン大学医学部神経学客員教授、日本ファンクショナルダイエット協会理事長、日本アンチエイジングフード協会理事長。
専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学など。
著書に『100歳までボケない101の方法―脳とこころのアンチエイジング』(文春新書)、『腸を元気にしたいなら発酵食を食べなさい』(河出書房新社)など多数。

【久賀谷亮(以下、久賀谷)】私が精神科医として、高齢の患者さんのお話を聞いていると、寿命が伸びて人生が長くなった半面、これからどう生きていったらいいかという羅針盤を失っている人が多くいると感じます。40歳以上の人は、いずれやってくる老後に向けて、どのように生きていくのがよいのでしょうか?「心の持ち方」についてアドバイスがあったら教えてください。

【白澤卓二(以下、白澤)】「長い老後をどう生きていいのかわからない」という人が増えているのは、生物学的な問題ではなく、社会がロールモデルをつくれていないことが問題だと私は考えています。
ひとつ例を挙げると、2013年、80歳でエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんは、同年代の人にとって大きなロールモデルとなりました。
三浦雄一郎さんがエベレストの登頂に成功したテレビニュースを、80歳の視聴者が見て、「自分と同じ年齢の人がエベレストに成功したのか。それに比べて自分は、部屋でぬくぬくとテレビを見て時間を過ごしている。これではいけない!」と思い立ち、トレッキングをはじめたという事例はかなりあるんです。
エベレストには登れないまでも、電車で高尾山に行って、山に登り始める。これは「メンタル」の変化ひとつですよね。このような「高齢期でもこれだけできる」というロールモデルを、社会はどんどんつくるべきだと思うんです。

【久賀谷】たしかに。とても共感します。

久賀谷 亮(くがや・あきら)医師(日・米医師免許)/医学博士(PhD/MD)。イェール大学医学部精神神経科卒業。アメリカ神経精神医学会認定医。アメリカ精神医学会会員。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。そのほか、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA非常勤医など。2010年、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」を開業。同院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。脳科学や薬物療法の研究分野では、2年連続で「Lustman Award」(イェール大学精神医学関連の学術賞)、「NARSAD Young Investigator Grant」(神経生物学の優秀若手研究者向け賞)を受賞。主著・共著合わせて50以上の論文があるほか、学会発表も多数。趣味はトライアスロン。著書に『世界のエリートがやっている最高の休息法』(ダイヤモンド社)がある。

【白澤】私たち日本の医師にとっては、日野原重明先生が強力なロールモデルとなっています。「自分が100歳の誕生日を迎えるときにも、このように現役でありたい」と思える。これは長くなった寿命を全うするために、とても重要なメンタリティです。
現実としてこれだけ寿命が伸びてきているわけですから、今こそ国を挙げて、老後の人生設計が前向きにできるような、精神的なロールモデルをつくるべきだと思います。

【久賀谷】老いていく原因は、遺伝子レベルでの寿命や体内の臓器の衰えだけではない。自らのメンタルによって老いていく部分もある。しかしメンタルの部分は自分たちで改善することができる、と。白澤先生がおっしゃることは、とても大事なメッセージだと思います。

【白澤】それなのに、日本政府は現状、そのロールモデルをあまり示せていないんですよね。気にしているのは、高齢者医療費が何割負担になるとか、高齢者1人の年金を国民何人が負担するとか、そういう「数の問題」ばかりで、いつまでも働けることの素晴らしさや、年をとっても元気に動けることへの喜びといった「メンタルの問題」を全然打ち出していません。実際、日野原先生のように、100歳を超えてもなおメンタリティを向上させている人の存在を、政府はもっと発信していくべきだと考えています。

【久賀谷】いま、政府は「働き方改革」を打ち出して、高齢者の就労機会をつくろうと動きはじめていますが、現実はまだまだ追いついていないといったところでしょうか。

【白澤】そう感じます。選挙戦になると「介護問題にしっかり取り組みます」とか、そういうリップサービスが飛び交っていますが、「高齢者が生き生きと、いつまでも働ける社会をつくります」と宣言している政党はないんですよね。そのために、「長い老後をどう生きていいのかわからない」と迷う人が増えてきてしまっているのだと感じます。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
  • ダイヤモンド・オンライン 関連記事
    一流の磨き方

    一流の磨き方

    浜野安宏 著

    定価(税込):本体1,300円+税   発行年月:2017年7月

    <内容紹介>
    「一流」とは、上流でも、中流でも、下流でもない。お金で買える高級品でもない。一流とは「とらわれない力」であり、孤独であり続ける力。膨大な「経験」に裏打ちされて、しっかり底光りするものであり、仕事や遊びの時間と質が、人を本物へと磨き上げるものである。

    本を購入する
    ダイヤモンド社の電子書籍

    (POSデータ調べ、8/6~8/12)



    久賀谷 亮(くがや・あきら)

    医師(日・米医師免許)/医学博士
    イェール大学医学部精神神経科卒業。
    アメリカ神経精神医学会認定医。アメリカ精神医学会会員。
    日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、
    イェール大学で先端脳科学研究に携わり、
    臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。
    そのほか、ロングビーチ・メンタルクリニック常勤医、ハーバーUCLA非常勤医など。

    2010年、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」を開業。
    同院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、
    最先端の治療を取り入れた診療を展開中。
    臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。

    脳科学や薬物療法の研究分野では、
    2年連続で「Lustman Award」(イェール大学精神医学関連の学術賞)、
    「NARSAD Young Investigator Grant」(神経生物学の優秀若手研究者向け賞)を受賞。
    主著・共著合わせて50以上の論文があるほか、学会発表も多数。趣味はトライアスロン。


    世界のエリートがやっている 最高の休息法

    イェール大で学び、米国で18年診療してきた精神科医が明かす、科学的に正しい「脳の休め方」とは? 脳の消費エネルギーの60〜80%は、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)に使われています。これは、脳が意識的な活動をしていないアイドリング状態でも動いている脳回路。この回路が働き続ける限り、ぼーっとしていても、脳はどんどん疲れていくわけです。つまり、DMNの活動を抑える脳構造をつくり、脳にたしかな休息をもたらすことこそが、あなたの集中力やパフォーマンスを高める最短ルートなのです。

    「世界のエリートがやっている 最高の休息法」

    ⇒バックナンバー一覧