将来、子供に感謝される「新しい育て方」とはどのようなものか?約200人の「リーダーシップ溢れる学生」および、各界で活躍するビジネスリーダーたちが「親に最も感謝している教育方針」を徹底的に調査した『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』
本連載では、著者であるミセス・パンプキン氏が、本書や数々の講演会で伝えている「自己肯定感が高く、主体的に自己実現できる人の育て方」のエッセンスを公開していく。

まっとうな金銭感覚を身につけさせる
──おカネを管理できなければ、いくら稼げても身を滅ぼす

 古今東西の歴史や宗教を調べてみますと、各国の経済発展の度合いと宗教観に密接な関係があるように思えます。西洋諸国、とりわけキリスト教やユダヤ教などお金儲けを奨励する(ないし、時代の変遷とともに奨励するように変えた)宗教では、お金を稼ぐことに熱心なようです。

 これに対し、全てを諸行無常のむなしいものととらえ、お金儲けに価値を置かない仏教では、その教義に忠実になればなるほど、精神的豊かさは別として、金銭感覚に疎くなるのでは、とすら思えます。

 ここで申し上げたいのは、「そもそもお金とは何なのか」という哲学的な認識を健全な形で人生の早い段階で形成することが、その人の人生および社会全体の金銭感覚に大きな影響を与える、というポイントです。

 本書『一流の育て方』は数多くのビジネスリーダーや主体性のある大学生の方々に、「数十年前を振り返って、その親に最も感謝している家庭教育」のポイントを広範に調査して書かれていますが、中でも興味深かったのが、非常に多くの人が、「金銭感覚教育の重要さ」を挙げておられたことです。

(以下『一流の育て方』より、アンケート抜粋)

●特に厳しく言われたのは「お金の大切さ」
 特に厳しく教育されたのはお金の大切さです。私の家庭には父がおらず、母が兄弟4人をひとりで育てました。質素な食事のときや友だちとの経済格差を感じたときなど、貧しさを感じさせられることがあるたびに、いかにお金があることが大切かを説いてくれました。(東京大学大学院経済学研究科Nさん)
●適切な金銭感覚をつけさせてください
 親の教育で、もっとしてほしかったことは「お金に対する教育」です。大学に入り、一人暮らしをする友人が多くなりました。その友人の金銭感覚と自分の金銭感覚を比べた際、大きく違うと感じました。具体的には、一人暮らしをする友人は生活費やさまざまな費用を自分で把握していますが、自分はまったくわからず、親に聞いても「子どもが知ることではない」の一点張りでした。(某大学大学院Sさん)
●お金を稼ぐことに罪悪感を感じるように
 私の家庭ではお小遣いやアルバイトが一切禁止だったので、経済観念が育たず、お金を稼ぐことに対する罪悪感を抱えることになりました。(早稲田大学Mさん)
 

金銭感覚で一番大切なのは「計画性」
──「お小遣い1年分」を与えて、予算管理させる人々

 子どもが独り立ちして自主的判断で生きていくうえで「正しい金銭感覚」ほど大切なこともそうはありません。

 私たちの社会には、儒教文化の影響からか、おカネの話をするのは「はしたない」という風潮があります。ですが親子間では絶対に、この話をタブーにしてはいけません。

 とくに裕福でない家庭に限って、子どもにはおカネの心配をさせたくないと考える親は多いものです。ましてや教育費となると、裕福な家庭の子女と経済的な理由で差がつくのはわが子が不憫と考えるようです。

 とはいえ、人はお金について無知なまま一生を過ごすわけにはいきません。収入に合った支出や、余裕があっても使うべきでない用途などを子どもに教えるのは親の責任です。おカネの話、特に稼ぐ話はともすれば下品だと捉える向きもありますが、それは大きな間違いです。汗水流したり、自分の専門や特技または資産を提供して、その対価を得る仕組みを教えるのに、上品も下品もないはずです。

 勤勉に誠実に働くことの大切さを説き、楽して稼ごうと横着な仕事をしたりギャンブルに走った人の悲惨な末路を教えることも親の仕事です。

 また、どう計画的におカネを使っていくべきかという資金管理の感覚も具体的に身につけさせてあげたいものです。

 お金の管理に関して、私の知人で、子どもに1年分のまとまったお小遣いを与え、そのお小遣い帳をつけさせている親御さんがおられます。

 本書『一流の育て方』のアンケートで見られたところでは、学校や生活に必要なものを逐一親が買い与えるのではなく、必要資金をまとめて渡してやりくりさせたり、大学生からは自分で生活費や学費を管理させたりといった方策も、お金に対する規律を教えるうえで効果があるようです。

 そういえば、自家用機で四国の自宅から東京の家庭教師宅まで通って勉強した、とある製紙会社の御曹司は、長じてギャンブルに使ったおカネが実に105億円。ギャンブル依存症と特別背任罪というおまけまでつきました。どれほど裕福でも、まともな金銭感覚がなかったために瞬く間に破産する人は少なくありません。

 世の中で活躍されるビジネスリーダーや優秀な大学生の多くが、金銭感覚教育を親にしてもらったことを感謝していることは、興味深い発見でした。

「将来、子供に感謝される、バランス感覚のある新しい教育法」の一つに、富める者も貧しき者も、金銭感覚はその人の人生を大きく左右するという教訓を入れ込むことの大切さを、強調したいと思います。

(※本原稿は『一流の育て方』から編集して掲載しています。本書の感想は、ミセス・パンプキン公式サイトまでお願いいたします)