前回の記事では災害情報集約サイトを取り上げ、震災の中で起きた劇的な変化に迫った。「sinsai.info」の立ち上げからサービスインに至るまでの奮闘で明らかになったように、現代のエンジニアたちは時代の変化を敏感に感じ取り、新たな社会のシステムのあり方を具現化しようとする。

 今回の記事では「社会を変えるソフトウェア」の動向を追っていこう。

錯綜する情報と初動の遅れ
バラバラに情報を発信する必要はどこにあるのか

 救援を求める発信や支援を募る情報、そして安否確認まで。震災直後からありとあらゆる情報が飛び交った。さらにその後、原発の危機が本格化する。「チェルノブイリ化するのではないか」、「東京から脱出するべきではないのか」。そんな言説まで飛び交っていた。

 政府から企業、NPO/NGO、個々の被災者や支援者までほぼすべての主体が日夜問題解決に取り組んでいるにもかかわらず、いまだ事態の収束には至っていない。一部ではさらなる混乱を招き、「人災」という言葉まで使われるようになった。

 あらゆる「権威」が、多様な解釈を示し、更なる混乱を招いていることも、今回の大きな特徴だろう。情報は延々と垂れ流され、混乱は加速していくばかりだ。

 これに対して、前回の記事で紹介した「sinsai.info」のやり方はユニークだった。情報を集めることにも、発信することにも主眼を置かず、ただ、情報を選別し「まとめる」ことにだけ注力したのだ。