パナソニックの創業者で、経営の神様と言われたあの松下幸之助氏が、じつは日々、自問自答を繰り返していたことを、みなさんはご存じでしょうか。人気のプロコーチ堀江信宏氏の初の著者『人生の悩みが消える自問力』では、自分に「5つの質問」を投げかけ、自問自答することの大切さを説いています。松下幸之助氏の補佐役として23年間仕えた江口克彦氏と堀江信宏氏の対談の後半をお届けします。ある時、江口さんは松下幸之助氏から叱責され、それについて一晩自問自答し続けた結果、経営者としての覚悟が変わったといいます。その興味深いエピソードとは……。

自問力は聞く力であり、周囲に喜びを与える力でもある

自問力は聞く力でもある

江口 「ちょっと前に『聞く力』って本がベストセラーになりましたね」

堀江 「阿川佐和子さんの本ですね」

江口 「私思うんですけど、話す力よりも、聞く力の方が大事ですよね」

堀江 「はい。私もコーチングの仕事をずっとやっていますので、心底そう思います」

江口 「つまり、相手が何を言ってるのかな、これはどういう意味で言ってるのかなっていう。その言葉自体の意味というのはもちろんですけど、その言葉の奥にあるその人のホンネというか、心の声というか……。そこを聞いて、考えるようにしないと人間として成長しないんじゃないかなって思うんです」

堀江 「同感です」

江口 「松下幸之助さんといると、そういう意味での本当の聞く力を持ってないとダメなんですよ。やっていけない。だって突然、わけ分からんこと言い出すんですよ。『君、風の音を聞いても悟る人はおるわな』って。こっちは、急にそんなこと言われても『はぁ?』ってなもんですよ」

堀江 「とても興味深いですね」

江口 「聞く力って、聞く力と同時に、あれは同時に自問力でもあると思うんですよね。突然、『君、風の音を聞いても悟る人はおるわな』って言われて、『え、これは何だろう、なぜ、そんなこと言われたんだろう』って心の中で自分に問うってことをしないといけないんです。少なくとも、私は23年間それをやってきたというか、やらされてきたというか」