シリーズ累計11万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』の著者・前田鎌利氏と、格安スマホや超高速モバイルネットを提供するUQコミュニケーションズの野坂章雄社長との対談が実現した。前田氏による「社内プレゼン研修」の全社導入に踏み切った同社。野坂社長の「狙い」はどこにあるのだろうか。仕事における「プレゼン」の本質に迫る対談の第1回。

UQコミュニケーションズが、<br />社内プレゼン研修を全社導入した理由

仕事の能力を司る「4つのスキル」

前田鎌利さん(以下、前田) 今回、「社内プレゼン」の研修講師として私をご指名いただきました。なぜこのたび、「社内プレゼン」のスキルアップが必要だと考えられたのでしょうか。研修の全社導入に踏み切られたきっかけや、狙いがありましたら教えてください。

UQコミュニケーションズが、<br />社内プレゼン研修を全社導入した理由野坂章雄(のざか・あきお)
UQコミュニケーションズ株式会社代表取締役社長。1956年島根県生まれ。1978年東京大学法学部卒業後、国際電信電話株式会社(現KDDI)入社。KDDIアメリカ株式会社上級副社長、KDDI株式会社中国総代表、KDDI株式会社執行役員などを歴任後、2010年にUQコミュニケーションズ株式会社代表取締役社長就任。米国公認会計士。米国法学修士。

野坂章雄さん(以下、野坂) 私が前田さんに期待しているのは「社内プレゼン」のスキルアップにとどまりませんよ(笑)。もっと大きな、「仕事全般」のスキルアップを期待しています。

前田 「仕事全般」のスキルアップですか! 身の引き締まる思いです。

野坂 私は、仕事の能力を細かく分けると「見方」「考え方」「伝え方」「動かし方」という4つのスキルから成り立っていると考えています。

「見方」は、事実が何なのかをつかむスキル。「考え方」は、事実をもとに課題は何なのか、この変化はなぜ起こったのかを考えるスキル。「伝え方」はプレゼンのスキル。そして「動かし方」は人を巻き込むスキルです。つまり、自分で見て、考えたことを、人に伝えて巻き込んで、「会社」という組織集団として社会に貢献する。これが仕事です。

 そして、これらの仕事の中核を担うのが「伝え方」のスキル。つまりプレゼンです。プレゼン力を磨くことによって、その前段階の「見方」「考え方」も意識するようになる。自分で見て、考えていないと、プレゼンする内容がありませんからね。そしてプレゼンを磨くことにより、もちろん人も上手に巻き込めるようになる。こういうわけです。

前田 なるほど。では、「仕事全般」のスキルアップに今、踏み切った理由は何なのでしょうか?

野坂 それは、会社として「働き方」を見直さなければと考えたからですね。

 昨今、日本人の「生産性」が注目されています。政府も「働き方改革」を政策の一つに掲げ、生産性の高い働き方をして長時間労働を減らそうと動き始めました。

 当社でも数年前から、社員のワークライフバランスを考えようという声は出ていましたが、当社はここ数年で急成長をしてきて伸び盛りということもあり、私自身は正直、「今がんばらなくてどうするんだ。ワークライフバランスなんて後だ」という意識がありました。

前田 負荷をかけなければ企業は成長しませんからね。難しいところです。

野坂 そうなんですよね……。しかし2016年から、それまでの超高速モバイルネットに加え、格安スマホの事業も始めると、仕事が輪をかけて忙しくなり、社内が毎日、戦場のようになり始めました。このままでは社員が全員疲弊してしまう。社長である自分の考え方を改めなければ。そう考えて、株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵社長に来ていただき、当社内の「働き方改革」に踏み切ることにしたのです。

 長時間労働を減らし、社員全員が活き活きと人生を歩むためには、どうしても「生産性」の向上が必要になります。だからこそ、今、「仕事全般」のスキルアップが必要なのです。

前田 たしかに生産性を上げるためには、社員個々人の仕事全般にわたるスキルアップは不可欠です。