働き方改革は有名無実か?「労働後進国」日本を直視せよ安倍首相が不退転の決意で臨む、政府主導の「働き方改革」をめぐる駆け引きが過熱してきた。しかるに今の日本は「労働後進国」と呼ばれても仕方がない状況だ

「働き方改革」が迎える天王山
盛り上がりとは裏腹に拭えぬ不安

 安倍首相が不退転の決意で「最大の挑戦」と謳う、政府主導の「働き方改革」をめぐる駆け引きが過熱してきた。具体的な実行計画のとりまとめを3月末に控え、国会論戦をはじめ、政・労・使間の意見調整が難航を極め、大詰めを迎えている。日本的な労働慣行が根を張る中で、政府主導の働き方改革は果たしてどこまで受け容れられ、功を奏すことができるのか、ひとえにその実効性が問われているが、改革を阻む構造的で、根本的な疑念は拭い切れない。

 日本はとりわけ欧米の先進国に成功モデルを求めているが、欧米とは「労働」や「働き方」をめぐる価値観の違いが大きい。家父長制や男尊女卑による男女の日本型分業モデルがいまだ労働環境を支配しており、その障壁も厚い。ILO(国際労働機関)の国際基準に従えば、日本の労働慣行には伝統的に人権軽視の風潮が拭えず、途上国並みの水準に甘んじている。

 政府主導の働き方改革は、まずは政府が率先垂範して国際基準を順守するよう、国民に強く訴え、順法精神を蔑ろにしてきた甘えの構造から脱却することが先決であり、最優先で取り組むべき課題である。懸案の実効性を高めるためには、罰則規定を強化して、順法への監視、監督の網目をきめ細かく刻む一方、摘発Gメン制度を導入して、違反企業には罰金を伴う業務停止命令を発令し、それを公表して社会的な制裁を科すなど、厳罰をもって臨む態勢の整備とその浸透が究極の決め手であり、より効果的な再犯防止策でもある。

 果たして、日本は働き方改革を押し進めることができるのか――。本稿では、あらゆる角度からそれを検証したい。

「今年は、働き方改革の断行の年だ。正規と非正規(労働者)の不合理な待遇の格差は認めない」――。安倍首相の働き方改革に賭ける年頭の決意表明である。

 アベノミクスの神通力が急速に色褪せていく中で、日本経済の持続的な成長と分配の好循環を軌道に乗せるための新たな起爆剤として、働き方改革に寄せる安倍政権の期待は計り知れない。以下は、安倍首相の決意の発言である。少し長くなるが引用したい。

「目指すは、戦後最大のGDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職率ゼロ。これら3つの的に向かって、一億総活躍の旗を高く掲げ、安倍内閣は未来への挑戦を続けていきます。その最大のチャレンジが働き方改革です。長時間労働を是正し、同一労働同一賃金を実現し、非正規という言葉をこの国から一掃します。(略)年度内をめどに働き方改革の具体的な実行計画をとりまとめます。スピード感を以て実行していく」(昨年8月3日、第2次安倍改造内閣発足時の総理会見にて)