シリーズ105万部突破の大ベストセラー『伝え方が9割』の著者で、先ごろ発売された『まんがでわかる伝え方が9割』も好評の佐々木圭一さんと、脳科学者で著書も多数、近著の『サイコパス』が話題となっている中野信子さんの対談が実現。「子どもの頃に、コミュニケーションについて悩んだ」という共通経験から盛り上がり、お互いの書籍の話、脳の話と話は多岐に渡りました。
(構成/伊藤理子 撮影/小原孝博)

トランプ大統領も『サイコパス』?!<br />中野信子×佐々木圭一(後編)

世の中を騒がせている人は、サイコパス度が高いのか?

佐々木 中野さんの『サイコパス』、拝見しました。表紙を見た時に、びっくりしましたよ。「サイコパス」「中野信子」と並んでいて、中野信子はサイコパスなのか!? と(笑)。これ、狙っているんですか?

中野 思ったでしょ?(笑)編集さんと考えたんです。ちょっと含みを持たせようと。

トランプ大統領も『サイコパス』?!<br />中野信子×佐々木圭一(後編) 中野信子(なかの・のぶこ)
脳科学者。東日本国際大学特任教授、横浜市立大学客員教授。1975年生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。医学博士。2008年から10年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(高磁場MRI研究センター)に勤務。著書に『脳内麻薬
人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体』(幻冬舎新書)ほか。

佐々木 その辺は、あまり明らかにしちゃまずいですか?

中野 見てのお楽しみですね(笑)。本の中に、「サイコパスチェックリスト」が載っているんですが…。

佐々木 最後のほうにありますね。

中野 このチェックリストはあくまで参考ですが、そこそこ高く出るという感じですね、私。

佐々木 なるほど(笑)。なんでサイコパスをテーマに本を書こうと思われたんですか?

中野 今世の中を騒がせている人たちのことを分析すると、共通の特徴があるんです。それってサイコパスじゃないかと議論になりまして、本にしようという話になったんです。DSMという診断基準があるんですが、それでいくとサイコパスは反社会性人格障害と分類されるカテゴリーのうちの一部なんですよ。

 反社会性というのは、社会に対して「反社会」なのでその社会のルールを逸脱する、ないしはその社会を壊すという性質を持った人たちです。とても暴れん坊で、テロリストのように秩序を破壊していったりするイメージがあると思いますが、サイコパスはそんなやり方はしません。もっと巧妙な方法で、人間関係を破壊したり、ちょっとずつみんなの利益、苦労、努力を搾取して、自分だけ得をするというような生き方をするんです。

佐々木 そうなんですか…。

中野 搾取されている側は、初めはそれに気付かないんですね。なぜなら、サイコパスは人間に擬態しているから。「あの人だったらいいわ」というような魅力を持った人であることが多いんです。…他国のトップリーダーに対して大変失礼ですが、おそらくドナルド・トランプ大統領は特徴的だなと思うことがあります。サイコパスの特徴に、「フィアレスドミナンス」(恐れ知らずの支配性)という尺度があるのですが、アメリカの歴代大統領の人格を分析すると、みんな高いんです。

佐々木 本書でも触れていましたね。ケネディ大統領もサイコパスだったのではないかと。

中野 ケネディ大統領、確かフェアレスドミナンスの高さ、歴代大統領の中で2番目じゃなかったかしら。

佐々木 怖いものがないということなんですか。

中野 そうです。脳には恐れを感じる「扁桃体」という領域があるんですけれど、その機能が低いんです。

佐々木 つまり、気軽に大胆なチャレンジをしてしまうと。

中野 おっしゃる通りです。皆が怖がることでも、勇敢にやっているように見える。皆が「それは慎重にやったほうがいいよ」と言っても、気軽にポンと決めてしまう。そこに潔さや気持ちよさを感じる人が、支持するんです。