これまで、記憶力は加齢に比例して落ちていくものではないことを自身の成果によって証明してきました。今回からは脳をだまして記憶力をあげるテクニックを披露していきます。
新刊『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』では、脳の仕組みを活用し、4回連続記憶力日本一、日本人初の記憶力のグランドマスターになった著者による世界最高峰の勉強法を紹介。記憶力が左右する試験、資格、英語、ビジネスほか、あらゆるシーンで効果を発揮するノウハウを徹底公開します。
「脳をだます」ことができれば、物事をたくさん覚えられる!
受験勉強や資格試験などを経験した人、もしくは現在進行形の人ならば、勉強する内容をなんとかラクに覚えられないかと考えたことはないでしょうか。
私も、記憶競技の練習を始めた頃は切実にそう思っていました。
そこで、どうすれば記憶力を上げることができるかを調べました。
まず、「記憶」とは、あくまでも脳を使って行う作業である以上、脳の記憶の仕組みを理解するのが先と考えました。
調べてみて最初にわかったのは、脳の中には記憶をコントロールしている場所があるということ。それが「海馬」と呼ばれる部位です。
記憶を長く残せるかどうかを決める役目を、この海馬が担っているのです。
つまり海馬がまるで裁判官のように、「これは重要な情報だから残そう」とか「これはあまり必要ないねえ、捨てちゃおう」と、情報を吟味しているのです。
直感でこれが手がかりになると思いました。
脳がそういう仕組みになっているならば、それを逆手に取ればよいのです。
要するに、「脳をだます」ことができれば、物事をたくさん覚えることができるわけです。
そして調べていくうちに、脳をだまして重要な情報と思わせるには大きく分けて3つの条件があることがわかりました。
脳のだまし方 1) 脳はやきもち焼き
第1の条件は、脳に対し覚えようとする「意志」を示すことです。
「あえて示さなくても勉強しているのだから、意志があって当たり前だよ」と言う人がいるかもしれません。しかしながら、これが案外できていない人が多いのです。
覚えようとする「意志」とは、言い換えると勉強に対しての「集中度合い」のことです。
音楽を聞きながら、テレビを観ながら、インターネットをしながら勉強している人、いませんか? そういう勉強以外のものに気を取られていると脳は、「勉強だけかと思ったら、音楽も聞いているのね。それにスマートフォンも見ているじゃない。私に本気じゃなかったのね」と、勉強を重要ではないと判断して覚えようとしなくなります。
それに対し、勉強だけに集中している人には、「まあ、この人一途で素敵! 本気なのね」と思ってくれて、「記憶スイッチ」をオンにしてくれる性質を持っているのです。
ここでいう「記憶スイッチ」とは、脳が記憶しやすい状態に入りやすくなるための「きっかけ」のことです。
記憶する行為は、脳にとって非常に負担がかかる作業であるため、なるべく記憶しないような仕組みになっています。ただでさえそうなのに、あれもこれもと手を出していると真剣さが疑われて相手にしてくれないのです。
ですから、脳に本気と思わせて記憶スイッチを押させるには、まずは勉強に集中できる環境を整えることが必要になります。記憶に関しては、「ながら勉強」はNGと思っておいてください。