食は、どうなる。
【第3回】 2011年5月18日 足立直樹

食べ物は畑から?

 私たちが毎日口にする食べ物は、どのように作られているのでしょうか?

 食べ物が流通する過程でさまざまな加工がなされていること、またそこには何らかのリスクが生じることを私たちは知っています。しかし、その生産現場の様子というのは、私たちは知る機会もなく、どのような問題が発生しているかはなかなかイメージできません。

現在、農家の方々が田んぼや畑で丹精込めて作ったコメや野菜、あるいは広い牧場で牧草を食んで育った牛。職人さんが真心を込めて作った味噌や醤油、お菓子など……そうした私たちがイメージするどおりの食べ物は、残念ながらもうごく一部の限られたものだけになってしまっています。

これも自然の恵み?

 真っ赤なトマトは、大地の上で太陽をたっぷり浴び、虫たちが授粉してできたものではなく、温室の中で水耕栽培で育ち、授粉せずにホルモン剤を塗布することによって結実したものかもしれません。

 また、ブロイラーの鶏ばかりでなく牛ですら、一生の間に一度も屋外の広い牧草地の上を歩くことがなく、牧草ではなく濃厚飼料を与えて室内で飼育されたものもいます。そんな風に人工的に作られた食材の方が、もしかしたらもはや多いかもしれません。

コーヒークリームは乳製品ではない!?

 手作りと信じて買った食品が、自宅に持って帰ってよく見てみると「手作り風」であったことなどは、皆さん誰もが経験したことがあるでしょう。機械化された工場で作られているというだけであればまだ良いのですが、中には本来とは似ても似つかない材料で作られたものもあります。

 例えば、冷蔵保存の必要がないコーヒークリームは、牛乳から作られたのではなく、透明な植物油に白い色とそれらしい風味を付けたものです。たっぷりと卵の詰まった子持ちシシャモやおいしそうなイクラも、同様に植物油などで作られた人造卵かもしれません。

 本来は畑などで作られる自然の恵みであったはずの食べ物が、いつの間にか形だけのものとなり、実際には工業製品化しているというのは、残念ながら現在ではよくあることです。規格通りの均質な食べ物を大量に、ほぼ一年中、安定的に供給しようとすると、どうしても不自然なことをせざるを得ないのです。

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足立直樹

東京大学理学部卒、同大学院で理学博士号取得。国立環境研究所、マレーシア森林研究所(FRIM)を経て、コンサルタントとして独立。専門分野はCSR、環境経営、環境コミュニケーション。日本生態学会常任委員、環境経営学会理事、環境省生物多様性広報・参画推進委員会委員、環境省生物多様性企業活動ガイドライン検討会委員、国際NGOナチュラル・ステップ・ジャパン理事、サステナビリティ日本フォーラム運営委員などを務める。


食は、どうなる。

現在、私たちをとりまく食の背景には、安全性の問題や、気候変動の影響など、とても複雑な事情や問題が絡み合っています。私たちが食べているものを様々な視点から見て、私たちの命を支えている食の仕組みをあらためて考えてみましょう。

「食は、どうなる。」

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