板橋宿の縁切榎。落語の題材にもなった江戸名所の1つである。皇女和宮は降嫁の際、わざわざここを迂回して通ったとか。もっとも地元では、悪縁は切るが良縁は結びつけると信じられている。

 だからと言うわけではないが、板橋区には良き地縁社会の伝統が今も色濃く残る。民生委員の調査・実態把握活動数ダントツの1位がその証だ。区内を覆う「縁」のネットワーク。それは、商店街の頼もしいサポーターでもある。

人口の多さと比べて見劣りする専門店
消費流出でマーケットの縮小が止まらない

 板橋区の小売販売額は15位、専門店販売額は16位と、7位の人口と比べ見劣りが否めない。池袋をはじめ、他区への消費流出を物語る数字だ。

 マーケットボリュームの縮小が、さらに追い打ちをかける。大工場が多い板橋区は、それが故の脆さがあり、いずれも過去5年間の比較で人口増加率19位、昼間人口増加率20位、区民総所得額(課税対象所得額)の伸び率は22位に止まる。人口こそ約2%の微増を示すが、昼間人口と納税義務者1人当たりの所得額は共にマイナス成長である。

 この影響をまともに受けているのが専門店だ。人口1人当たりの店舗数は21位、同じく人口1人当たりの販売額は21位、売場面積は23位に甘んじる。

 そんな板橋区だが、他の郊外区と同様、スーパーの勢いは強い。総合スーパー、専門スーパー、ドラッグストアなどを合計した「全スーパー」の店舗数が、区内の総小売店数に占める割合は23区最多。およそ8店に1店がスーパーである。一部データの非公表があるが、販売額は区内全体の約4割を、売場面積は6割近くをスーパーが占めると予測される。

板橋区の商店街――苦戦中の専門店を負のスパイラルから救う「縁の真髄」