顧客の得になる場合があるのか?

 EB債の損得を顧客が判断するには、かなり面倒な計算が出来ないといけない、ということを前提にして、次の二つの問題を考えてみて欲しい。

 先ず、「EB債の設定にあたって、業者は顧客にとって得になるような条件に作ることがあり得るか?」。

 これは、大まかには、EB債が含意するプット・オプションのプレミアムよりも大きなクーポンを設定するということだが、商品の買い手が得をする条件では、売り手が損をしてしまうことになるので、売り手側が計算間違いでもしない限り、先ずはあり得ないと言ってよかろう。

 つまり、「計算間違いはしないだろう」と信じることが出来るような業者がアレンジする仕組み債は、顧客側から見て、そもそも損得計算を行ってみるまでもなく不利だ、ということなのだ。

 それでは、次の問題。「EB債を買った投資家は、商品について理解していると言えるだろうか?」。

 投資家が損を嫌うのだとすると(利回りに釣られて投資するくらいだから、損は嫌いなのだろう)、EB債を購入したという事実自体が、その投資家は債券の条件について判断(計算を伴う)が出来なかったということだ、といって差し支えない。つまり、この商品を買うこと自体が、商品の損得が判断できなかったことの分かりやすい証拠だといっていいだろう。

 つまり、EB債は、商品を理解できない投資家以外からのニーズがあり得ない金融商品なのだ。金融業者が、商品について正しい理解が出来ていない投資家から儲けるこの商品を扱うことは、本質に於いて「詐欺と同じだ!」といって過言ではないと筆者は考える。

 金融庁は、個人向けのEB債の販売を即刻禁止すべきだ。また、この商品の販売は消費者庁の観点から見ても問題ではなかろうか。

 EB債に限らず、個人を対象とした「仕組み商品」の販売は、1998年に施行されたいわゆる「日本版金融ビッグバン」で認められるようになったものだ。しかし、実質的な手数料を条件の中に隠したまま、投資家にとって損得の判断しにくいリスクを取らせるような、金融業者に合法的な騙しの機会を与える規制緩和は明らかに行き過ぎだったのではないだろうか。

 過ちは早く改める方がいい。