複雑な金融商品
以下は、ツイッターで流れてくるニュースからたまたま拾った、通称「EB債」と呼ばれる仕組み債券の発売に関する明細を加工したものだ。特定の業者を批判することに本稿の目的がある訳ではないので、販売証券会社、債券の発行体(外国の金融公社だ)、仕組み債のアレンジャーなどの名前は伏せてあるが、債券の条件は記事に掲載されていたものそのままだ。
★ ある仕組み債の条件
・商品分類:「他社株転換条項 早期償還条項付 円建債券」
・表面利率:年6.00%
・期間:1年
・対象株式:東レ
・早期償還:いずれかの早期償還判定日の早期償還参照価格が
早期償還判定価格以上になった場合、
額面金額に利息を付して償還
・早期償還判定価格:当初価格の100.00%
・満期償還:対象株式の評価価格が
(1)転換価格以上であった場合:額面金額で償還
(2)転換価格未満になった場合:交付株式数の対象株式と
現金調整額の交付で償還
・転換価格:当初価格の100.00%
早期償還の判定日がいつなのか記事には記載が無いが、たとえば、半年後だとすると、投資家から見て、債券を購入して半年後に東レの株価が債券購入時の株価を上回っていればこの債券は3%のクーポンと共に満額償還されるが、そうでなければ1年後まで償還はなく、1年後に、東レの株価が当初価格を上回っていれば残りのクーポン3%と満額の償還、株価が下回っていた場合も同額のクーポンが支払われるが債券の償還は当初の株価で計算された株数の東レの現物株式で償還される、という仕組みになる。
尚、この種の商品は、東レ以外の株式についても多数発行されている。今回は、たまたま東レの株価を対象にした商品を取り上げたに過ぎない。
ダイヤモンド・オンラインの読者は、経済に強い方が多いと思うが、この条件の損得が上記を一読されて果たしてピンと来るだろうか?
この商品を販売しているのは、中堅の証券会社だが、推察するに、商品を販売しているセールスマンもこの商品が買い手にとってどれだけ損なのか得なのか、正確には分からないのではないだろうか。