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野口悠紀雄 未曾有の大災害 日本はいかに対応すべきか

復興投資の増加と貿易構造の大変化

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第13回】 2011年5月19日
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 前回、経済全体の貯蓄と投資のバランスについて述べた。ここで、cを限界消費性向とし、

 家計貯蓄=家計可処分所得-消費=(1-c)×家計可処分所得
  家計可処分所得=家計所得-税+移転
  政府貯蓄=税-政府消費-移転

 であることに注意して、前回の②式を書き換えると、つぎのようになる。

 (1-c)×(家計所得)+企業の貯蓄+(1+c)×税-政府消費-移転
=投資+(輸出-輸入)  ②’

 この式を用いて、復興投資が10兆円増えた場合の影響を考えよう。

 まず、家計所得以外の項が不変である場合を考えよう。右辺が10兆円増加するので、(1-c)×(家計所得)が10兆円増加しなければならない。cは0.8程度の数なので、家計所得が50兆円程度増える必要がある。

 ところが、家計所得は300兆円程度なので、これは、家計所得が約17%程度増加しなければならないことを意味する。しかし、生産制約があるので、とてもそのようなことは起こりえない。

 この連載ですでに述べたように、今後暫くの間の電力制約はかなり厳しい。東京電力管内のみならず、他の地域においても、夏の電力供給は綱渡り的状態だ。夏だけでなく、冬においても、かなり厳しい制約がかかっている。こうした状況があるので、家計所得を17%も増加させるような経済拡大は考えられない。

 企業貯蓄はどうだろうか? この値は、2008年度で約15兆円である。大まかに言うと、営業余剰(利益)が39兆円で、ネットの利子支払いが10兆円程度、そこからさらに税や社会保険料負担を差し引いて、この値になる。したがって、営業余剰が10兆円増加し、利子支払いや税・社会保険料が不変なら企業貯蓄は10兆円増える。そして、他の項目が不変であれば、右辺が10兆円増えることに対応できる。

 しかし、これは、営業余剰が26%程度増加することを意味し、これも現実には到底起こりえないことだ。実際には、電気料金の引き上げに伴って、営業余剰が減少する可能性のほうが高いのである。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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