日本で新興国市場で強い企業といえば、
おなじみのヤクルト
国内市場が縮小する日本企業にとって海外市場、とりわけ新興国の開拓は大きな課題です。新聞でも海外進出の話題が毎日のように報道されています。そのような中、食料品という国内市場中心の業界にありながら、すでに営業利益の半分以上を海外で稼いでいる企業がヤクルト(会社名:ヤクルト本社)です。
ヤクルトが特に強いのは、中南米のメキシコやブラジル、それにアジア諸国といったBOP市場です。BOPとは、Bottom of the Pyramidの略で、新興国の貧困層・低所得者層マーケットを指します。アメリカの経営学者C.K.プラハラードが著書『ネクスト・マーケット』で提唱した概念です。今回はヤクルトがBOP市場で成功している要因を探っていきます。
ヤクルトが5月13日に発表した2011年3月期決算は、売上高3060億円(前期比+5%)、営業利益204億円(前期比+7%)を記録しました。飲料メーカーとしては規模的には中堅どころの会社ですが、特筆すべきは海外での実績です。現在、ヤクルトは海外の31の国と地域で「ヤクルト」の販売を行っていて、1日あたり約2000万本を販売しています。国内の販売本数がミルミルやジョアを含め約1000万本ですから、ほぼ倍の数を海外で販売していることになります。結果として、海外での営業利益が130億円となり、営業利益の半分以上を海外で稼いでいる計算になります。
食料品、飲料品は地域ごとの嗜好性が強いため、自国の商品をそのまま他国に持ち込んで販売するのは、一般的に難しいといわれています。また、各国で販路を築くのが一朝一夕では困難で、その2点が日本の食品メーカーがなかなか海外進出できないネックになってきました。最近頻繁に発表される日本メーカーの海外進出でも、自社が直接進出するケースより、現地メーカーを買収したり、提携したりする戦略を取ることが多いのもその2つが理由です。