銭湯サイト運営のかたわら
実際の銭湯経営にも乗り出す

 立ち上げたのは、デザイナー(Superposition Inc.)の日野祥太郎さん。銭湯業界の関係者ではなく、まったく部外からの参入である。

「子どもの頃から風呂そのものが大好きだったんですが、当時は銭湯へ行く習慣はありませんでした。デザイナーになって仕事を始めた頃、近所に銭湯があったので、気分転換に通いだしました。それがきっかけとなり、だんだん銭湯にハマっていったんです」(株式会社東京銭湯代表 日野さん)

 利用者として銭湯へ足しげく通っていた日野さんが、WEBメディアを立ち上げたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだった。

「災害時には誰もが助け合わなくてはならないということを痛感しました。でも、自分のまわりを見てみると、地域のコミュニティがなくなっていることに気づいたんです。若者がもっと参加して地域とのつながりをもう一度、作りたい。そう思った時に、銭湯を拠点にできないかと。銭湯は地域の人が気軽に交流できる居場所です」

 2015年3月にサイトを立ち上げた直後から、主旨に共感する人びとが集まり、今では3~40人のメンバーで取材を行い、企画やサイトに運営にあたっている。

 昨年からは、埼玉県川口市で「喜楽湯」という銭湯も実際に運営している。昭和20年代から続く老舗の銭湯を引き継ぎ、井戸水を使い、薪で沸かすという伝統を守っている。

「多くの銭湯を訪問してきたので、銭湯経営の大変さは頭ではわかっていたのですが、実際にやってみると本当に大変で、先達のみなさんのご苦労が身にしみました。例えば、掃除ひとつとっても技術が要る。でも、各銭湯さんはいろいろな見識や技術をもっているのに、それらのノウハウが業界内で共有できていないんです。これはもったいない」