東日本大震災発生後、電話回線が長時間不通となったことは記憶に新しい。だが、その中でもつながり続け、生存確認や情報提供等で活躍したのがツイッターやミクシィなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)系サービスだと言われている。今回の震災を通じてSNSの社会的役割は変化するのだろうか。ミクシィで起きた実際のケースをもとに考えてみたい。
昨年米国発のSNSである「フェイスブック(facebook)」が本格上陸するまで、日本ではディー・エヌ・エーが運営する「モバゲー(mobage)」、「グリー(GREE)」、そしてミクシィ(mixi)を「三大SNS」と呼んできた。
SNS事業収益は、大きく分けて有料のゲームアイテムやアバター(ネット上の分身)用アイテム、もしくは有料会員などユーザー向けの「課金収入」と、対企業間取引の「広告収入」の2つがある。これは3社とも共通だ。
だが、この課金収入の割合は3社とも同じではない。SNS事業の総売上のうち課金収入が占める割合がモバゲーが約9割、グリーが8割なのに対して、ミクシィは2割前後とかなり低い。これは、モバゲーとグリーが課金収入を稼ぎやすいゲームビジネスに特化していることを示している。
モバゲーやグリーには、セガ、バンダイナムコゲームス、コナミなど大手ソフトメーカーが参入し、ゲーム用アプリを提供している。たとえば、コーエーテクモの人気コンテンツ「100万人の信長の野望」(モバゲー用)クラスになると月1億円の売上があると言われ、すでに大きなビジネスに成長している。こうなると、モバゲーもグリーもSNSというよりは、ゲームプラットフォームと言った方がしっくりきそうだ。
では、SNSとは何を指すのか。
考える上でのヒントとなるのが、フェイスブックの創業者、マーク・ザッカーバーグ氏などのインタビューを中心にまとめたDavid Kirkpatrickのノンフィクション「the FACEBOOK EFFECT」である。
この中でザッカーバーグ氏はフェイスブックについて、"We're utility"と語っている。日本語版「フェイスブック 若き天才の野望」(日経BP社刊)では「ガスや水道と同じ公益事業」と訳しているが、これは的確にSNSの存在理由を表しているように思う。
そして、この本でミクシィだけが「ひとつの国もしくは地域を支配する」日本のSNSとして紹介されている。もっとも、そのミクシィも原著では「ゲームに特化している(It specializes in game)」SNSとして紹介されてはいるが、2000万人規模のゲームに特化したユーザーを抱えるフェイスブックの方がよほどゲームビジネスに対する親和性が高い。それは、先ほど挙げたミクシィのSNS事業の売上に占める課金売上の割合も併せて考えても明らかだ。
それではミクシィユーザーは、SNSとしてのミクシィに何を期待しているのだろうか。東日本大震災時の状況から考えてみたい。