ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
日本を元気にする新・経営学教室

気がついたら競争ルールが変わっていた
なぜ旅行業界で新興勢力が台頭したのか
早稲田大学ビジネススクール教授 内田和成

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],平野光俊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],髙木晴夫
【第17回】 2011年5月30日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

業界地図が塗り変わると
何が変わるのか

 5月19日付けの日経新聞に楽天トラベルの国内旅行取扱額が2379億円となり、それまで業界2位だった近畿日本ツーリストと3位の日本旅行を抜いて、JTBに次いで業界2位になったという記事が出ていた。

 これは旅行業界を知る人にとっては結構衝撃のニュースである。

 というのも、これまで旅行業界と言えば、JTBをリーダーに近畿日本ツーリストや日本旅行、阪急交通社、東急観光などの総合旅行代理店というのが王道で、HISのように海外の航空券主体あるいは楽天トラベルのように国内の宿泊主体という代理店は、ニッチプレーヤーで旅行代理店としては一流ではないと思われていた。

 ところが数年前に、海外旅行の取り扱いではHISがJTBに次いで業界2位にのし上がり、総客人数だけ取ればHISが1位なってしまった。そこへ今回の楽天トラベルの国内2位のニュースである。

 明らかに業界地図が塗り変わっている。地図が塗り変わると何が変わるかと言えば、業界のルールもっと正確に言えば競争のルールが変わるのである。

HISは競争のルールを
非価格要因から価格に転換した

 これまでの旅行業界の競争のルールは、全国あるいは営業地域においてどれだけたくさんの店舗を構えて、そこに営業社員を配置し、手厚いサービス体制を敷けるかということであった。

 また、航空会社や鉄道会社の切符販売の手数料、あるいはホテルや旅館の客室販売手数料だけでは利益が上がらないために、JTBの「ルック」に代表される自社主催のパッケージ旅行の企画販売なども行っていた。そのため全国に幅広く店舗網を持つJTBが業界リーダーで、それに次ぐプレーヤー達も多かれ少なかれ、JTBと同様の資源配分で事業展開していた。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

平野光俊(ひらの みつとし) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1980年早稲田大学商学部卒業、94年神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了、98年同大学院博士課程修了、博士(経営学)、2002年から同大学院助教授、2006年から現職。経営行動科学学会会長、日本労務学会常任理事、日本労働研究雑誌編集委員。主著に『日本型人事管理』中央経済社。


日本を元気にする新・経営学教室

好評だった経営学教室の新シリーズ。新たな筆者お二人を迎えて、スタートする。国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入している。日本企業に漂う閉塞感を突破するには、何がキーとなるのか。著名ビジネススクールの気鋭の教授陣が、リレー形式で問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

「日本を元気にする新・経営学教室」

⇒バックナンバー一覧