ユナイテッド「乗客流血事件」が物語る航空業界の死角ユナイテッド航空が降機を拒否した乗客を機内から引きずり出し、流血させた事件は、同社自身や株主に多大な損害を与えた。なぜこんなことが起きたのか(写真はイメージです)

ユナイテッド航空「乗客流血事件」を
招いた、信じがたい3つのミス

 今週、世界を一番騒がせたビジネス関連のニュースは、ユナイテッド航空の乗客が血まみれで機内から引きずりだされた事件だろう。この記事を書いている時点では、まだ情報は限られていて細部はわかっていない。一方で、航空業界のコンサルティングを多く経験した立場からニュース以上にわかる部分もある。今回はその「わかる部分」を解説しよう。

 この事件は3つのミスが重なって大事件になってしまった。結果はとにかくひどいものだった。

 シカゴ発ルイビル行きのユナイテッド航空3411便は、乗客を一旦機内に案内し満席になった後で、さらに4人の従業員を乗せなければいけないことが判明した。これが第一のミス。

 航空機で乗れる人数よりも多くの予約をとってしまうオーバーブッキングは頻繁に起きるが、通常は搭乗前に振り替えの処理をするので大きな騒ぎは起きない。乗客が乗り込んでしまった後の満席のフライトで、さらに4人の乗員を後から乗せなければならないことに気づいたというのは、明らかなオペレーションミスだ。

 第二のミスは、降りてもらう乗客を募集するにあたって通常の手続きを踏まなかったと言われていることだ。代わりの便に乗ってもらうために、通常は400ドルのクーポンから始めて、誰も応じなければ金額を上げて800ドル、その次は1350ドル(約15万円)まで補償金を上げて自主的に降りてくれる乗客を探す。ところが現場のマネジャーは、なぜか途中の段階までしか金額を上げず、申し出る乗客がいなかったため抽選で降りる客を決めるとアナウンスした。