これはITの進化の成果なのだが、ダイナミックプライシング(動的価格設定)という仕組みで、要するに空席が出ないようにインターネットなどで航空券の投げ売りをする仕組みが進化した結果、最後の席まできちんと埋まるようになってきたのだ。その予約数はキャンセル分を予めAIで予測して、空港で空席待ちをしている人たちを最後に詰め込むことで、最終的な辻褄を合わせている。

 このような実情があるから、搭乗ゲートでは昔と違い、常にオーバーブッキングをさばかなければいけない状況になっている。今回のような問題が起きる確率は、以前よりもずっと高まっているのだ。

ITの進化で飛行機は
常にオーバーブッキング

 今回の報道の中で、抽選で降りる人を選んだにもかかわらず「降りる人が全員アジア人だった」ことが差別ではないかという指摘もあった。

 たぶん、この推測は少し実態とは違っている。抽選で降りる人を選ぶ場合、安い航空券を持っている人の中から選ぶのだ。航空券はファースト、ビジネス、エコノミーの3種類しかないと我々は思いがちだが、価格や利用条件の違いで(航空会社によって異なるが)、実は全部で23種類くらいの航空券がある。

 その中で降りる抽選に当たる確率が多いのは、安い航空券を買った人が中心になる。昔で言えば、このような場合、所得が低い層が選ばれることになった。そう考えると、黒人やヒスパニック、アジア人が選ばれる確率が高くなるのは当然だったのだが、最近は少し事情が違う。

 ネットやスマホの普及で、最近では富裕層も格安な航空券を発見して購入するようになってきた。だから今回のように、医師が抽選で当たってしまい、目的地に到着できなかった場合の逸失利益が大きすぎて、降機に抵抗するというような事態が起きる。安い航空券を持っていた人が電話で弁護士に連絡をとろうとするような事態は、航空会社がマニュアルをつくった際には想定していなかったのかもしれない。

 おそらく抽選でアジア人に差別があったのではなく、我々アジア人は、他のおっとりしたアメリカ市民よりも経済的な航空券を見つけるのが上手だという傾向があるからというのが、今回の事態の背景にあるのだと私は思う。